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LGBTsという存在の可視化! 小椋ケンイチの明るく前向きな「自分らしく生きる」メッセージ。

自分らしく生きるとは。
そんな長年抱いていたゲイとしての自分にできることとは一体何なのか?

LGBTsだけでなく誰もが自然体で生きていける社会づくりを目指し、昨年12月にWe think (SHIBUYA).実行委員会によって始まった「自分らしく生きるプロジェクト」。TOKYO MXでの番組放送や、YouTubeライブ配信などを通じてメッセージを届けているが、そのプロジェクト発起人となったのが、おぐねぇーの愛称で親しまれているヘア&メイクアップアーティストの小椋ケンイチさん。
番組のナレーションやリポーターも自ら務め、チーム一丸となってこのプロジェクトを推進するのには、テレビに出る側の人としてのある思いがあった。
今回は、小椋ケンイチさんがオープンに生きる姿勢と番組に馳せる想いを伺った。

時代にあわせて自分もオープンに生きられるようになった。
等身大で飾らないおぐねぇーのゲイストーリー。

今振り返って見てみると僕の青年時代って、オネェ(誇張された女言葉的なニュアンス)的な感じを売りにして何かをやる…なんてまったく考えられない時代で、ゲイであることなんて堂々と言うことすらできませんでした。
ただ、僕が憧れて目指していたヘア&メイクアップアーティストって美意識や感性が必要な業界で、職業的には受け入れてもらいやすい世界だったのは自覚しています。

それで目指すべき夢を歩んでいたのですが、美容師をやっていた頃や駆け出しの頃は、自分の口からは言うことはなく、ようやくカミングアウトしていったのはフリーに転身してからでした。最初は自分から言わないけど、もしかして…?って聞かれたら答えるくらいのノリで。スロースターターと言うよりは、時代も時代だったので、じっくり自分のことを知ってもらえるようになってから、オープンにしても良いのかなって思うようになったんです。

それに、一緒にお仕事をさせていただくタレントさんってほぼ垣根のない状態で僕を受け入れてくれて、すごく楽だったんですよね。今までの人生でずーっと何かしら嘘をついてきたから、どことなく嘘疲れもしていて…。でも自分がオープンにすることで、みなさんももっともっと心を開いてくれるようになって、どこかしら誰もが持っているマイノリティが重なって、良い調和が取れていったと思っています。本当、ボーイフレンドの話が普通にできるって些細なことなんだけれど、全然気持ち的には違かったんですよね。

それから自分自身に自信がつくと、ゲイである前に「オネェ」が武器になると思えたのは本当のとこで、その当時オネェが持つイメージって「女の子とうまくやれる。現場が賑やかになる」など、お仕事的には重宝されたんです。そうこうしているうちに、今までのクローゼットな自分のことなんか忘れていて、「ゲイ」であることがバレてしまうかもしれないっていう恐怖心は自然と拭い切れていってました。

オネェタレントとしてテレビに出るようになったのもその頃でした。
何かが取れたように吹っ切れて自分らしくしていたら、芸能事務所の社長の目に留まり、あれよあれよという間にテレビ出演していくことになって。運が良かったのか芸能界の思惑にもピタリとはまり、今に繋がる活動をさせてもらえるようになったんですよね。

だから、僕のゲイストーリーって、今のようなLGBTムーブメントのある環境ではなかったけれど、その時のタイミングや空気感、世の中の方向性にたまたま乗っかっただけだったんですよね。でも、それがあったからこそ今の自分がいれるんだなって素直に思えるので、良かったと思っています。

表舞台にいること。テレビの中だけがLGBTsの全てではない。
普通に暮らす街中のそこにもあそこにも、私たちがいることを知ってほしい。

僕はこうして恵まれた環境にいて表舞台に呼んでいただける立場ではあったけど、僕たちのようにタレントとしてではなく、端から見たら分からないという表現が正しいか分かりませんが、ごく普通に暮らしている人々もいること。圧倒的にそちらのほうが一般的で、それはオネェというカテゴリーではないLGBTsの存在。僕のようなゲイもいれば、レズビアンの方や、心と体の性が一致しないトランスジェンダーなど、身近なところにいます。誰にも相談できなくて苦しんでいる人、地方に暮らす方々の大変さ、生きづらさを感じている仲間のが多いことを知っています。

そして、ようやく日本もダイバーシティな社会へ動き始めている昨今、地域や企業がムーブメントを起こしている中で、LGBTsの一人であり、メッセージを発信できる業界にいる僕が何もしないで見守るのではなく、今を生きる人たち、そして次の新しい世代のために少しでも力になれることができないかと思っていました。

この信念はカミングアウトしてメディアに出る時から、僕が心に刻んでいるものです。
初めてセクシュアリティを公言したのが『週刊SPA!』(扶桑社)。たまたまKABA.ちゃんとの対談企画があって、その特集が「私たちオネェが日本を変えましょう」って特集だったの。周囲にオープンにするのと全国にカミングアウトするのは次元が違うぞって真剣に悩んだ時に、何か核となるものを持ってこの表舞台で自分やLGBTsのためにできることをしようと思ったいきさつがあります。

だから、オネェや女装家という括りでのLGBTsの可視化が進み、世の中に受け入れてもらえる土台ができた今、次にやらなければいけないのは、「バラエティ」ではないリアルな声を届けることだと思いました。ゲイに限って言えば、見た目も仕草も男のまま、男が好きっていうのが一番理解されにくいものだし、ゲイってオシャレとかセンスがある、女の気持ちも分かるって…そんなわけないでしょってツッコミたくなる(笑)。

そしてもう一つは、若い世代がオープンに生きはじめている傾向が強くなったことで、働く環境ともしっかりジョイントをさせたいと思ったの。自分らしく生きれているのに、職場環境が伴ってなければ何の意味もないわけだし。国や法律もそうなんだけど、今の社会に追いついていっていないことが多いから、そういう面をサポートできたり、積極的にLGBTsフレンドリー企業を紹介したりして、その輪を大きくしていけないかと思って。
それで今回、そんな僕の想いを共感してくれるチームと巡り合うことができ、この「自分らしく生きるプロジェクト」の発足に至りました。

「自分らしく生きるプロジェクト」に願う未来への希望
人の心や社会を変えていくには時間がかかる。少しずつがちょうどいい。

番組放送開始してからはや5ヶ月。自分の想いを託したにも関わらず、僕も取材を通して学ぶことばかりなんです(笑)。
LGBTsという括りの僕たちだけど、僕は他のセクシュアリティの素性を知らなかったし、先進的な取り組みをしている企業の姿勢やみんなそれぞれに工夫しながらすでに「自分らしく」生きている人が多いことにもビックリ!

見えなかった・知らなかった部分がテレビを通して分かるって改めて凄いんだなって思えますし、何より取材すればするほど、どの個人も企業もそこに至るまでの惜しみない努力と時間がかかって今に至っていることが胸に響きました。人や社会を変えていることって簡単な道のりではないけれど、諦めてしまっては何も動かないんだなって…。僕も時代の流れには乗ってきたけど、今の自分にたどり着くまでにすごく時間がかかったしね。(今の時代でもう一度青春を謳歌したい!!笑)

このプロジェクトを通して、僕は視聴者の方々だけでなく制作スタッフや関わってくださっている企業の方々がLGBTsに触れる機会を多くし、さらに番組がサンプルとなって、社会の手助けができたら嬉しいなって思っています。そして、都心と地方の差は確実にあるけれど、都心部から広がりを見せることで、地方にも拡大していく流れが作れたら良いなって。もちろん当事者にも生きる希望を与える番組であってほしいなと願っています。

そして、協調性の大切さばかりを重んじるのではなく、個の良いところに目を向け伸ばしていく考え方に時代は変わってきているから、自分がやりたいこと、譲れないこと、素直な生き方をしてほしいって思っています。人に合わせるのではなく、自分がどうしたいか。
笑顔で楽しく、前向きに、明るく…自分らしく生きることがどれだけ輝いているかを知ってほしいです。

PROFILE

プロフィール/小椋ケンイチ
ヘア&メイクアップアーティスト。400名以上の著名人のメイクを手掛け「メイクを通じて人を幸せにしたい」という思いから、一般向け講習やイベントなどにも積極的に参加。コスメ・スキンケア商品のプロデュースも行う。またタレントとしてテレビやラジオへの出演もし、2019年12月に「自分らしく生きるプロジェクト」の発足人の一人として参加。

Twitter@ogune_official
Instagram@kenichi_ogura

撮影/EISUKE
取材・インタビュー/村上ひろし
記事制作/newTOKYO

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