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寺院で同性結婚式! 埼玉県川越市・最明寺が目指す“すべてのカップルに、幸せを”

今年5月1日に埼玉県川越市が「パートナーシップ宣誓制度」(日本全国で48番目となる自治体)を導入したのを機に、同市内にある寺院が「同性結婚式」をスタートさせた。LGBTウェディングの普及が年々広がりを見せる中、寺院での挙式も少しずつではあるが目立つようになった。
そんな中で、今回、瑶光山・最明寺の副住職を務める千田明寛(みょうかん)さんがLGBTに理解を示し、同性結婚式を取り組むことにした理由とは何だったのか? そこには、仏教の教えと明寛さんの隔てのない「生きる」姿勢に現れていた。

インドでの修行経験が多様性を考えさせた
互いの文化・他者の違いを尊重し共存する生き方に習うこと

2015年から2016年までの一年ほど、インドに修行をしていた時期がありました。インドでは多種多様な宗教を信仰している人が混在し共に生活をしています。肌の色や人種が違えば、言葉もバラバラ。カースト制度もあるので身分階級などの差別も多少ありますが、お互いがお互いの文化を受け入れ尊重し合いながら生活していました。

修行をさせていただいた寺院さんは田舎の地方都市だったのですが、日本人は私ただ一人。現地では私がマイノリティ(少数派)になるわけですが、誰一人差別せず、そこにある「違い」を当たり前のように受け入れてくれていました。
日本で暮らしているとほとんどの方が仏教徒で、同じ顔立ちで同じ言葉を話し、互いの違いを意識することがあまりないのが現状ですよね。どちらかと言えば同じでありたい、違っていることをおかしい、とさえ思ってしまうこともあるでしょう。

ですが「自分とは違う他者を尊重する心」という共生文化がインドにはあって、私自身凄く考えさせられたと共に勉強をさせていただく期間となりました。LGBTを理解し受け入れるという以前に、人としての在り方や豊かな個性の尊重、言うなれば大きい意味での「多様性」が私の中に芽生え始めたきっかけとなりました。

LGBT当事者と触れ合う中で分かるリアルな声
知らなかっただけで同じ地域に存在する多くの方々

修行を終え帰国したのが2016年。ちょうど日本でもLGBTという言葉が頻繁に聞こえるようになった印象がありました。仏教界でも「LGBTとは何か?」という研修会・勉強会が頻繁に催されるようになり、当事者の方をお招きしたお坊さん向けセミナーに私も参加するようになりました。

その際、講師の方から伺ったのが、最近の調査では10人に1人はLGBTに該当するということでした。人口の約10%という割合はもはやマイノリティという存在ではないと思っています。お葬式やお墓の問題に向き合う私たちも、真剣に考えていかなければいけない課題です。また、お寺やお坊さんに悩みを相談しに来られる方もいずれ出てくる思い、LGBTについて学ぶ機会を増やし、今年1月末には『埼玉レインボープライド2020』にも参加しました。
パレードに参加させていただいた理由には、いくら勉強をしたからと言っても当事者の方々の気持ちを全て汲み取ることはできないこと。またメディアで活動されているLGBTタレントさんだけではなく、同じ地域で共に暮らす一般の方々のリアルな生き方を自分の目でしっかり見てみたかったのがあります。

そして初めて参加したパレードでは、知らなかっただけで幅広い世代でたくさんの方がおられることに驚きつつ、非常に多くの繋がりや交流も生まれる良い機会に恵まれました。
本当の意味で当事者の方々の声に耳を傾けることができたと思いました。

川越市と共に歩む豊かな未来を目指して
パートナーシップ宣誓制度と同性結婚式への想いとは?

今年5月1日から川越市が「パートナーシップ宣誓制度」を導入するのを機に、最明寺でもお寺で挙げられる同性結婚式をスタートさせました。市が多様性を認める街になりつつあるということで、地域に根付いた私共も何かお役に立てることがないかと動き出したのがきっかけでもありました。

お寺って今はお葬式のイメージが強いのですが、昔は駆け込み寺(困ったことがあった時に相談する場所)や寺子屋(寺院での学問施設)という言葉があったように、地域のコミュニティの一つとして日頃から使われていた場所なのです。それにキリスト教では生まれると教会で洗礼を受け、結婚式を挙げ、葬儀も同じ教会で行うなど人生をかけてお世話をします。
でも本来であればお寺がそういうポジションにあるべきだと思っていて。私たちは死というセクターにだけ関わるのではなく、「生きている間」にどう関わっていくか、そういった意味でもすべての方々の幸せの一つとして、LGBT当事者の方々への結婚式のお手伝いができないかと思った次第です。

こうして生きているからこそ、生きている間の悩みに寄り添っていくこと。性別関係なく、そこに向き合っていきたいと私は思っています。

指輪の代わりに交換するレインボーフラッグ仕立ての念珠。長岡念珠店による手作りで、念珠の輪のように心を丸く幸せになってほしいという想いが込められている。

あらゆる人々を広く受け入れる仏教の教え
心の在り方ひとつで誰もが幸せになれることができる社会へ

LGBTに限らず最明寺では様々な支援を行なっています。障害者支援や乳がんのピンクリボン支援、生活に困っている方々へのフードパントリーやおてらおやつクラブなど、お寺の枠にとらわれずに活動しています。
元々このような活動はマイノリティの支援をしようとして取り組んだのではなく、必要だったからやっていく中で今のような形に至りました。私はお寺は性別・国籍・職業などに関わらず、誰もが気軽に来れる場所であり、さらに時代に合わせた活用法で親しまれるべきだと思っています。

そして、仏教の良いところは「誰しも差別せずあらゆる人を広く受け入れる」という、 稀有な考え方を持っていることです。だからこそ仏教徒の多い日本では、差別のない平和な暮らしをしていただきたいですし、同性愛を否定する宗教もある中で、仏教では批判する教えがありません。

ですので、人それぞれの個性を尊ぶ社会を目指し、最明寺では、同性結婚式で皆さまの門出の祝福をさせていただければ幸いです。またお寺は敷居が高い印象がございますが、そんなことはありませんので、気軽にお越しいただければ嬉しいです。

瑶光山 最明寺

〒350-1104 埼玉県川越市小ケ谷61番地
TEL:050-3591-4287
公式ウェブサイト https://www.saimyouzi.com
LGBT Wedding https://saimyouji-wedding.com
Twitter@saimyou_kun

※挙式は本堂・本尊の阿弥陀如来像を前に執り行います。挙式だけでなく、パートナーと同じお墓にも入ることも可能です。また希望する性別の戒名も授けることができます。二人だけの結婚式から大人数まで。最明寺はLGBTフレンドリーな寺院を目指しております。お気軽にご相談ください。

取材・インタビュー/村上ひろし
写真/新井雄大 Twitter@you591105
記事制作/newTOKYO

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