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【パートナーシップを通しての当事者の想いとパートナーシップ制度の現状】 ~奈良市でのパートナーシップを受けて感じた当事者の想い~

パートナーシップを受けるきっかけ

ヒカル:自分はトランスジェンダー男性で、生まれた時は性別学的には、女性でした。
4年前に国内で、性別適合手術をして、戸籍上は男性に戸籍変更をしています。
そのため、パートナーと「結婚」という選択を選ぶこともできますが、LGBTQの当事者にとって、まだ同性婚が認められていない日本においては、「結婚の壁」はとても大きいものです。一緒に親や親戚の理解や住居や保険、名字の変更や様々な課題があります。

桃子:私は、20代の頃にレズビアンと自認し、日々生活をしていました。その頃は、「結婚」という事が自分にとって、とてもかけ離れた事でした。
現在のパートナーとお付き合いする事になり、自認するセクシュアリティが揺らぎ、レズビアンという自認よりもレズビアン寄りのパンセクシュアルへと自認が変わり、自分と向き合う事ができました。
そして昨年の12月、パートナーとディズニーランドへ遊びに行った時サプライズでプロポーズを受けて、嬉しい反面、すぐに返事ができずに戸惑っていました。
自分にとって「結婚」ができる可能性と実感が湧かない日々の中で、葛藤する毎日がありました。
私たちにとって、現在の選択肢の中で「男女の婚姻」として婚姻関係を結ぶのではなく、一人の人として共に人生を歩みたいという想いが強く、パートナーシップ制度が、自分達の住んでいる町(奈良市)で出来るようになればそちらを選びたいと考えるようになりました。

※パンセクシュアル(セクシュアリティ関係なく人を好きになる性的思考)

奈良市でパートナーシップを申請して感じた当事者の想い

奈良市の市役所にパートナーと一緒にパートナーシップの申請に行ってきました。
前回話しを聞きに行った時に部屋を予約して、パートナーの誕生日である7月29日に交付してほしいと希望をお願いしたところ、申請は1、2週間余裕を持って申請してくださいとの事だったので、2週間前に行きました。

こちらのパートナーシップ宣誓書にそれぞれの名前と住所を記入します!

名前は通称名でも使用実績などかあれば大丈夫みたいです。
自分自身は名前は既に「ひかる」から「輝」へ22歳の時に改名済みだったので、「定政 輝」と記入しました。※改名には家庭裁判所にて正式な手続きが必要になります。
奈良県の場合は、5年間の通称名の使用実績や理由書や診断書と交付の為の小切手なども必要でした。

※各都道府県によって改名の手続きは異なると思いますので、あくまで自分の場合の例です。
申請の際は、2人とも緊張しながら名前と住所を記入していきました。そして、職員の前で宣誓をして、「私たち、定政 輝 と 河崎 桃子 は、奈良市パートナーシップ宣誓制度実施要綱第4条第1項に基づき、互いをその人生のパートナーとし、日常の生活において、協力し合うことを宣誓し、署名します」と2人で宣誓をしてきました。  

奈良県でのパートナーシップ制度の取り組み

ヒカル:奈良県では、令和2年4月1日より、奈良市と大和郡山市でパートナーシップ制度が導入されており、7月29日の時点では、私たちカップルを含めて、奈良市3組、大和郡山市0組という形となっています。
私達としても、奈良県でこういったパートナーシップの取り組みやLGBTQ啓発の活動が行政として、行ってもらえるのはすごく嬉しい変化だと感じています。
ですが、行政の取り組みの中で、職員によってLGBTQの知識にばらつきがあったり、知識不足により配慮などが欠けると、良い取り組みをしていても、残念な気もします。
そのためにも、奈良県内にて継続的に啓発活動をしていく必要性をすごく感じました。
LGBTQについて全て理解するのは難しいのかもしれない。けれど、まず知ってみる、寄り添ってみるという事が大切で、形や形式だけのやりとりでは、すごく残念だなと感じました。

桃子:パートナーに対し、職員の方は「輝さんは、トランスジェンダーですね」と確認をされ、私へのセクシュアリティについての質問はその職員さんからはありませんでした。その時に私のセクシュアリティもお伝えしてもいいですか?」と確認を取りました。
私にも大切なセクシュアリティがあり、トランスジェンダー(FTM)のパートナーは、ストレートの女性だと見た目で決めつけられた事がとても嫌でした。

ヒカル:例えば、宣誓の条件として、どちらか一方又は両方がセクシュアルマイノリティの当事者である事が条件なので、職員の方がセクシュアリティを確認する場面があります。
今回のように、トランスジェンダーのパートナーだからといって、ストレートだとも限らないし、パートナーにも大切な自認するセクシュアリティがある。
それを見た目や相手のセクシュアリティで、異性カップルだと決めつけないでほしいなと感じました。パートナーも悩みに悩んで、今の大切な自認のセクシュアリティがある。
それを無意識だとは思うけど、大切に聞いてほしかったなと思います。

ヒカル・桃子:誰もが生きやすい社会になりますように。住みやすい奈良県になりますように。私たちは、これからも地元で地道にLGBTQや多様な性の啓発活動を行って行きたいと考えています。

<対象者の要件>
 1.双方が成年に達していること。
(民法第4条)
 2.住所について次のいずれかに該当している
 (1)双方が市内に住所を有していること。
 (2)一方が市内に住所を有し、かつ、他の 一方が3ヶ月以内に市内への転入を予定していること。
 (3)双方が3ヶ月以内に市内への転入を予定していること。
 3.双方に配偶者がいないこと及び他の者とパートナーシップの関係にないこと。
 4.宣誓をしようとする者同士が近親者でないこと。

<必要書類>
※申請までに事前に揃えておく必要書類
 ①世帯全員の住民票の写し(続柄記載のあるもの)
 ②戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書
  外国籍の方については、大使館等が発行する婚姻要件具備証明書及びその日本語訳
 ※どちらも3ヶ月以内に発行されたもの
 ③市内への転入を予定している方は、その事実を確認することができる書類(賃貸借契約書等)の写し
④本人確認(次の書類のいずれかを提示してください。)
 ・個人番号カード(マイナンバーカード)
 ・住民基本台帳カード(顔写真が貼付されたもの)
 ・旅券(パスポート)
 ・運転免許証
 ・その他官公署が発行した免許証、許可証又は登録証明証であって、顔写真が貼付されたもの※上記の書類がない場合は、次の(1)の中から1点と(2)の中から1点
 (1)写真付きの学生証や法人の発行した身分証明書等
 (2)健康保険証、年金手帳、年金証書等
 ※宣誓、証明書等の交付及び再交付の際に、ご提示ください。

<奈良市HPより参考> 

※交付されると、下記ののような証明書とカードが職員より受領される。

PROFILE

氏名:定政 輝(サダマサ ヒカル)
出身地:熊本県 奈良県 斑鳩町在住
セクシュアリティ:トランスジェンダー(FTM)
好きな言葉:「一期一会」「努力は裏切らない」
所属:LGBTQ支援団体RainbowCreate代表/奈良レインボーフェスタ共同代表/児童発達支援管理責任者・保育士/幼稚園・保健体育教員免許所持
全国各地で、LGBTQ講演会活動や定期的な奈良レインボーカフェの運営や奈良レインボーフェスタの企画・運営やレインボーグッズの製作・販売を行う。仕事は大阪市内で児童発達支援放課後等デイサービスの管理者として発達障がいを抱えた子どもたちの療育支援に携わっている。

氏名:河崎 桃子(カワサキ モモコ)
出身地:奈良県 奈良市在住
セクシュアリティ:レズビアン寄りのパンセクシュアル
好きな言葉:「縁は生きもの 育てるもの」
所属:奈良レインボーフェスタ共同代表/LGBTQ支援団体RainbowCreateスタッフ

全国各地でLGBTQ講演会活動のアシスタントや奈良レインボーフェスタの企画・運営を行っています。

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