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ジェンダーフリーのミックスバー「Campy! bar 渋谷PARCO店」に行くと LGBT当事者の未来がもっと明るくなるワケ♡

左から/女装パフォーマーやタレント・ライターなど多方面で活躍し、お店のプロデュースを担うブルボンヌさん。「Campy! bar」の家弓社長。一度会ったら忘れられないインパクトのあるビジュアルと絶妙な距離感の接客が心地良い店長のチカコ・リラックスさん。ドラァグクィーンの634・マンガリッツァさん。

新宿二丁目のメインストリートである仲通りに本店を構えておよそ7年。様々なジェンダーのスタッフが微笑み混じりにお客さんと楽しくお酒を交わしているのが印象的な「Campy! bar」。
そんな新宿二丁目のランドマークにもなっている「Campy! bar」の2号店(系列店舗を含めると3店舗目)が、昨年11月にリニューアルした渋谷PARCO B1Fに位置するCHAOS KITCHENの一角にオープン。多彩な人たちが行き交うファッションカルチャーの聖地・渋谷の商業施設内にオープンした理由とは?
Campy! bar社長の家弓さんを交え、お店のプロデュースを担うブルボンヌさん、店長のチカコ・リラックスさんの3人にお話を伺うと、LGBTと渋谷のつながりをはじめ当事者の未来にとっても、意味のある進出であることが分かってきた。

楽しみながらLGBTの存在をライトに発信する「Campy!bar」が新宿二丁目を飛び出し、渋谷PARCOにオープン。

――「Campy!bar」が渋谷店をオープンするに至った経緯を教えてください。

家弓さん:お店としての位置づけはLGBTの人たちを知ってもらう入り口という感じかな。そういった意味も含めて7年前に新宿二丁目のメインストリート・仲通りにド派手な内装が見えるガラス窓のお店をオープンさせました。こう思ったのはブルボンヌと仕事をし始めてから。

僕はゲイであることを悩んだことがなかったんだけど、彼女に話を聞いてみると自身がセクシュアル・マイノリティであることに悩む当事者がたくさんいること、逆にLGBTの存在を正しく理解している人が少ないことに気づかされたんです。

渋谷店のオープンもこういった現状を変えたいという意味合いが強いですね。馴染みのない方にとっては「新宿二丁目」って聞くと未だに閉鎖的なイメージが先行して怖いという声もあるんです。そういった興味はあるけどなかなか足を運べないという人へのアプローチにもなるし、渋谷には色々な人が訪れますからね。

――新宿二丁目から離れて、渋谷に2号店をオープンすることをどう思いましたか?

ブルボンヌさん:新宿とお家の往復で渋谷にほぼ縁が無い人生だったから、オープンが決まった時に周りの友人に「女装で出勤してる途中にチーマーに襲われたらどうしよう~!」みたいな話をしたら「そんなん、いませんよ。いつの話してるんですか(笑)」って憐れまれたわ!それぐらい渋谷が今、どんな街になっているのか全く把握していなかった。
新宿二丁目はある意味守られている場所よね。そこから離れて最先端のモノ・コトが集結する場所に足を踏み入れたら、正直からかってくる人もいるんじゃないかな~みたいな不安はあったの。ただそれ以上に「あの、PARCOさんに誘われたわ~!」って嬉しくなっちゃってね。

とは言え本店から離れた2号店となると、そこを仕切ってくれる人がいてこそじゃないですか。そこで、以前から二人でツタンカーメン展に行くほどに心を開いていた(笑)チカコ・リラックスさんに相談したら、快諾してくれて。お店の雰囲気作りも任せることができたし、チーマーもセンターGUYも現れず、いいお客さんばっかりで一安心しています。

チカコさん:私もブル(ブルボンヌ)さんとほとんど一緒。渋谷は尖っている人が多いイメージだったんだけど、いざ箱を開けて営業がスタートしたら自分が渋谷にどれだけの時間足を踏み入れていなかったのか気づかされました。お店に足を運んでくれるお客さんもそうですけど、街自体も本当に新しいカルチャーを受け入れる雰囲気に変わってきてるし、挑戦心みたいなのも強く感じています。

新宿二丁目への想いと時代にあった新しい価値観、そして次へのバトン。

――ゲイバーやミックスバーに馴染みのない層も多いですが、お客さんの反応はどうですか?

チカコさん:バーの仕組みに不安がある方もいますが、従来の仕組みとは違い料金に対してはとってもリーズナブル。チャージもないし、キャッシュオンデリバリーって感じで営業してます(笑)。また、こんな見た目ですけど未だに「女の子が好きなの?」なんて聞かれることもあるので「普段は男の格好で男が好きなんです」というふうにパーソナルな面から話をして、楽しい時間の中からちょっとずつ私たちのことが伝わっていけばいいかなと思ってます。

ブルボンヌさん:「女性だけで行って良いんですか?」みたいなことはよく聞かれるわね。ノンケさんの中には、新宿二丁目にあるようなバー全てが「全員ゲイの人だけで集まっててウチらは蚊帳の外」と尻込みしてる人も実はまだまだ多い。でも、うちの客層は性別・年齢・セクシュアリティ何でもOKだし、実際に本店も渋谷店も女性のほうが多いのよ。あと「お値段が心配」ってのもよく言われて、豪華なショーチャージ付きのセット料金のイメージも強いみたいだけど、ここはソフトドリンクなら500円から飲めるしね。さすがに、その1杯だけで何時間もいたら、女装の怖めな顔がますます怖く見えるかもしれないけど(笑)。

とは言えそもそも「女装してる人やLGBTの人たちがいる場を楽しんでみたい」って気持ちがあるからこそ来店するわけだから、うちみたいなミックスバースタイルは、一見さんでもすんなり馴染んで楽しめる人も多いですね。

――新宿二丁目店と渋谷店、どのような立ち位置にしていきたいですか?

チカコさん:当事者以外の子が何も知らずにいきなり新宿二丁目に行って、怖い目にあったという事実を少なからず知っているの。話を聞いてみると、そこで働く人たちへの配慮が足りなかったり、スナックやバーの楽しみ方を知らずに足を踏み入れちゃっている場合がほとんどなんだけど(笑)。

その子たちがもう一度新宿二丁目に足を運びたいと思えるように、受け皿的な役割も果たせたら幸せよね。今に始まったことじゃないんだけど、新宿二丁目にノンケさんや外国人が増えちゃうのって、もう止めようがないことなのよね…。

ブルボンヌさん:一時期、遠回しに「新宿二丁目にゲイ以外の人が足を運ぶようになったのは、オネエブームやうちみたいなミックスバーがオープンしたのも要因の一つ」みたいに一部のゲイの方に言われたことがあったの。でも思うのね。街ってそもそも生き物だから時代の空気で変わっていくし、もしゲイだけが集まるゲイだけの場所で十分にお金やお店が回っていたら、今みたいにはならなかったと思うの。アプリで出会える時代、普通の店でもオネエで喋れる人たちも増えて、新宿二丁目のバーを隠れ家的に必要としている絶対数が確実に減ってきている。

だから「ノンケが来なかった時代は良かったよね~」みたいな気持ちは否定しないけど、これだけ時代や状況が変われば、街のかたちも同じじゃいられない。ゲイだけでは支えられなくなったなら、その空間を利用して、新しい価値観を広げる場所として提供した方が有意義だと思うのね。

正直、うちの店のお客さんじゃなくても、変な騒ぎ方をするストレートを見ると、そういうつながりを申し訳ないなっていう気持ちもちょっとはあるの。でも例えば、私たちの次を生きる世代の同性カップルが寄り添える法律が作られる時、当事者や本人たちの理解だけじゃ社会は動かない。そういう時に必要になってくる当事者以外の人たちの気持ちや理解を深めるためには、交流する場が増えることも大切だと思ってる。お商売でもあるけど、毎晩けっこうな数の人たちがリアルな当事者たちと触れ合っていることで何かは伝わるはず。長い目で見ればそういうことに意味を感じられるって信じているわ。

「人目を気にするより、自分がなりたい姿で楽しむ人生の選択肢もあるんだよ」「自分ものびのび生きてみようかな」というメッセージを感じてくれたら嬉しいわ。(ブルボンヌ)

――ジェンダーという面で現在の「渋谷」のイメージを教えてください。

家弓さん:昔から当たり前に問題提起される事案にやっと今、取りかかるのか…と感じることが多く、世界全体で見てもLGBTへの配慮や理解が遅れている日本の中でも、渋谷はほんの少しだけリードしているイメージはありますね。

街自体が多様性を認める傾向になってきているから、セクシュアルという面でマイノリティであるLGBTも生きやすい場所にはなっていると思うけど、まだまだ足りないことはたくさん。

ブルボンヌさん:でも、ずっと前から行われているプライド集会は代々木公園で開催されてたし、パレードで歩く場所も私たちが馴染みのある靖国通りや新宿通りじゃなくて渋谷区の繁華街。LGBTというか主にゲイの話になっちゃうけど、お酒を飲んだりエッチなことをするのは新宿中心、でも社会的に何かを発信する作業に関しては昔から割と渋谷エリアだったんだよね。その他にも日本で初めて同性パートナーシップ制度を受け入れ、施行されたのも渋谷区。逆に二丁目イメージで馴染み深い新宿区は、表立った取り組みがあまりないってのは少し寂しいくらいよ。

あえて年増ゲイの主観バリバリで言えば、新宿は「遊び場」、渋谷は「発信地」、ついでに中野は「居住地」という感じかな。ちょうどこのPARCO店をオープンするタイミングで、施行され4年経過した同性パートナシップ制度を振り返るイベントがあってね。渋谷区長と数組の同性カップル、そして私が司会で座談会をしたの。その後、渋谷区内に住むほぼクローゼットなゲイの友人から「うちの郵便受けに入ってた冊子にブルが載ってたよ」って見せてもらったのが区報の「しぶや区ニュース」。カラー表紙に同性ペアたちが載ってて、中には座談会の様子もしっかり。こんな形でもいろんな人たちに発信されていて、嬉しく感じました。

音楽の渋谷系、ファッションの裏原のようにカルチャーの新しい波が生まれやすいのも渋谷区のイメージ。だとしたら、PARCOさんがうちを誘致したことで、「セクシュアリティ」「ジェンダー」に関する新たな価値観やカルチャーが生まれるかもしれない。そう考えると私たちが新宿二丁目の本店で培ってきた想いや雰囲気を運び出してみるのに、とてもやりがいのある場所に進出できたんじゃないかな。

――ダイバーシティ社会を目指す「Campy!bar」 。今後、どのような存在になっていきたいですか?

ブルボンヌさん:いや、基本はそこまで大げさには考えてない、オネエ会話が楽しいバーなだけです(笑)。でも、ざっくり「フリー」を感じてもらえる存在ではありたいかな。人って生きていく上で「男らしく、女らしく」「年齢をわきまえて」みたいに自分にブレーキをかけ、枠に押し込めがちじゃない? でもここにきたらド派手な恰好をした女装のゲイがいたり、イケメンだと思っていたバーテンバーが実は元女子だったりとかする。「人目を気にするより、自分がなりたい姿で楽しむ人生の選択肢もあるんだよ」というメッセージを理屈じゃなく、見て触れ合って感じられる場所になっている。「自分ものびのび生きてみようかな」と感じてくれたら嬉しいわ。

家弓さん:LGBT当事者と話して色々なことを直に感じられるという経験は日常的に多いことではないので、個人がセクシュアルマイノリティについて考える場所としては貴重な時間を過ごせると思います。

僕はとにかくLGBTの存在をより多くの人に知ってほしいんです。LGBTというふうにカテゴライズされてしまっていますが、その中でも様々な人がいる。「Campy!bar」ではその違いを楽しんで、自分と相性が合う人を見つけて楽しくお話をしてくれたら嬉しいですね。そうして翌日から始まる仕事や学校へ向かう道で話したことを思い出して、少しでも楽しい気持ちになっててくれたらと思っています。

チカコさん:「Campy!bar」は女装、ゲイ、トランスジェンダーなどそれぞれの個性を提供する場所。自分らしくいれる楽しい空間ですので、ぜひ、気軽に遊びに来てくださいね。

PROFILE

Campy!bar 渋谷パルコ店
東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ B1F カオスキッチンフロア
19:00~29:00(日曜のみ18:00~24:00)

☞Campy!bar 公式サイト
☞渋谷PARCO公式サイト

写真・記事制作/芳賀たかし(newTOKYO)

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