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【2020年、絶対目が離せない2人】 令和のファッションアイコン・TaikiNoah。日韓ゲイカップルモデルが世界を飛び回って感じたこと
TaikiNoahと言えば世界的ファッションブランドのコレクションやTGCといった日本でのイベントにも出演、2020年のファッションシーンを語る上で欠かせないゲイカップルだ。Taiki(日本)とNoah(韓国)、それぞれのインスタグラムではモデルとしてのクールな一面と何気ない2人の日常を覗くことができ、そのギャップが堪らなく可愛いと話題にもなっている。セクシュアリティをオープンにすることでそれをアイデンティティ、バリューとしてランウェイを共に歩いてきた彼らだからこそ分かる、世界各国と日本のLGBTsに対する考え方の違い、そしてファッションが与えてくれたことをお届け。
ゲイというセクシャリティに悩んだTaikiとNoahの10代。
オープンに生きれるようになったきっかけと2人の出会いとは?
Taiki:幼少期から男の子の友達よりも、女の子とばかり遊ぶような子だったので、大体は女の子の輪にいたと思います。スポーツが嫌いというわけではなかったけれど、外で走り回ったりするよりも、おしゃべりや料理をすることのほうが楽しかったです。多分、小学校中学年ぐらいには自分のセクシュアリティについて気づいていた部分もあったのですが、「男の子が好きかもしれない」ということを認めたくなくて…。父親と兄の影響で始めたアイスホッケー。始めた理由はひょんなことでしたが、今思えば男らしいスポーツをやり続ければ普通の男の子になれる日がくるかもしれないと思って大学卒業までの14年間という長い間、アイスホッケーは続けたかもしれない。ただ、セクシュアリティの面で何かが変わったという事はなかったですね。
僕がオープンになれたのは大学2年生の時かな。初めてバイセクシュアルの彼氏ができたのですが、その彼と別れることになったときに、あまりにも落ち込み過ぎて相談も含めて、勢いで母親にカミングアウトしたんです。母親はありのままを僕を受け入れてくれた上で、励ましてくれました。それが今の心の強さに繋がっていると思います。
Noah:僕は中学生の時に同級生の男の子を友達として好きだと思っていたのですが、卒業してからすぐ初恋だったと気づきました。それからセクシュアリティについて悩み、考えることが増えるようになったかも。高校生の時は告白された女の子と好意はないけど付き合ってみたり、好きになる努力もしましたが、何一つ気持ちは変わらず。以降、自分のセクシュアリティがゲイだと確信しました。
ただ、それを周囲に知られるという事は避けたかったので、韓国の新宿二丁目のようなゲイタウンにも足を運ぶことはできませんでしたね。そんなクローズだった僕がオープンに生きられるようになったのは兵役を終えて向かった、ドイツで過ごした2年間が一番影響していると思います。韓国や日本において街中で少しでも「普通」とは違う人がいると、冷ややかな目線や空気が流れますが、ドイツは全くそんなことなくて。
「他人が何していようが、誰と付き合っていようが、他人は他人」というように、本当に干渉する空気が無いんですよね。そういうお国柄なので、同性パートナーが手をつないでいようがそれを「愛」という見方でしか見ない。一人ひとりをナチュラルに受け入れている空気は本当に心地が良かったのを覚えています。そういった環境で過ごしたため自然と心がオープンになっていきましたし、彼氏といえる男の子にも出会いました。周りからどう思われようと関係ないと思えるようになったのはその時ぐらいからだと思います。
Taiki:僕は大学卒業後、本格的にモデルとしてお仕事をスタートさせたのですが、Noahと出会ったのもそのお仕事の一環で韓国に行ったときでした。
Noah:そうだったね。僕とTaikiには共通の友達がいたんですけど、その子が日本から来ていたTaikiをわざわざ僕の家まで来て紹介してくれたんです。その時は寝起きでウトウトしていたので、Taikiを見た時は「顔が小さい日本人が来たなぁ~」ぐらいにしか思わなかったし、多分もTaikiもそんな感じだったと思いますよ(笑)。それからお互い特に興味を持つことはなかったのですが、友人を介して頻繁に会うようになって、自然とお互い惹かれていったという感じかな。付き合おうという告白もお互いなかったので、後になり覚えやすい記念日を二人で考えました(笑)。
Taiki:実際に付き合い始めてからはお互いを近い存在で感じられるよう、日本で生活することに。NYなどの案もあったのですが準備に時間を要しますし、お互いの母国が近い方が何かと便利だったと言うのが一番の理由だったと思います。Noahはドイツでモデルの経験もあり端正なルックスとスタイルも持ち合わせていたので、僕の知人のモデル事務所と契約した上で就労ビザを取得、こうして2人での生活が始まりました。
Noah:最初はTaiki以外に誰も知っている人はいなくて寂しかったけれど、社交的な彼がパーティや展示会などで「僕の恋人です」と積極的に紹介して回ってくれたんです。幸いなことにファッション業界という事もあって拒否反応を示すような人はいませんでした。その甲斐あって、いつしか「2人でセット」みたいにファッション業界の関係者を始め多くの方々が認知してくださるようになりました。今ではありがたいことに国内外問わずモデルとしてお仕事をいただけるようになりました。
「ファッションは自分らしさを楽しむための第一歩」
世界を飛び回り、様々なセクシュアリティについての考え方に触れてきたTaikiNoahが目指す最終形
Taiki:Noahが言った通り2人での仕事がコンスタントにいただけるようになった事もあってインスタグラムのフォロワーも日に日に増加、僕たち2人の日々を発信するのがより楽しくなった一方で、LGBTs当事者の方、特に若い世代からお悩み相談のメッセージが来る事も増えました。セクシュアルマイノリティが生きやすい社会になったとはいうものの、まだまだ悩んでいる方達がいることに変わりはありません。
そういった方達には自分が置かれている狭いコミュニティや日本という国だけの事象で物事を判断しないこととアドバイスすることが多いですね。先ほどNoahがドイツでの経験を話していましたが、NYのセントラルパークではベビーカーを押すゲイカップルなんて日常的な景色の一つとして当たり前にあることですし、1つの家族の形として受け入れられています。5、6年前に訪れたイギリスの異性愛者向けのクラブでも同じ。トイレの前には「10人に1人がゲイであることは当たり前であって、差別することは許されない」というポスターも貼ってあるという事もありました。僕たちのようなLGBTsの存在は当たり前だということを視野を広げて考えてもらえればと思っています。セクシュアルマイノリティであることは恥ずかしいことでもないし、隠れるようなことでもないって。
Noah:僕もTaikiと同じ考えかな。学生にとっては学校が世界の全てに思えてしまうかもしれないけど、そうじゃない。学生時代は本当に狭い世界で、卒業してから本当の世界が待っていると思うんです。今、苦しい思いをしている方々にはもう少しだけ頑張ってみてとしか伝えることはできないけど、僕たちのインスタグラムを通して、ファッションというのは自分に自信と勇気を与えてくれる一つのアイテムでもあることにも気づいてもらえたら嬉しいなと思っています。
Taiki:その日の気分で自分が着たいものを着て、外に出る。それも自分らしさを表現する一つの方法でもありますからね。
ぜひ自分らしさを楽しむツールとしてファッションという選択肢も加えてもらえたら嬉しいです。きっと、自分が起こそうとしているアクションに対して背中を押してくれるはず。
Noah:そうだね。僕は最近で言うとハイヒールにハマってるかな。展示会や街中で見かけていいなと思ったアイテムを探して、実際に試着して実際に履いてみる事もありますよ。足のサイズが26cmくらいなので、頑張ればレディースの25.5cmの靴とか履けちゃうんです。ハイヒールってウィメンズのイメージがあるけどジェンダーで着たいものを制限する必要もないんじゃないかな。要するに自分がこうしたい、こうなりたいという気持ちを大切にしてほしいんです。
Taiki:今はファッションやNoahと「TaikiNoah」として2人で活動できていることに幸せを感じていますが近い将来、可能であればNoahと家族になりたいと思っています。ただ、日本は他の先進国にのようには行かず、同性婚が残念ながら認められていません。ただ家族になりたいという気持ちの面だけではなくて、僕たちのようなセクシュアルマイノリティかつ国籍の違うカップルは、今の法律ではどう頑張ってもどちらかが就労ビザを取得して一緒にいるという方法を取らざるを得ない。社会制度的に同性婚を認めてもらえないと生活で困る面がたくさんあるんですよね。これが婚姻関係を結べる男女2人なら、何も迷わず配偶者ビザを取得すればいい話なのですが…。
Noah:今は一緒にいられるけど、社会保障で守られた関係ではないから婚姻関係にある方達と平等に扱われる事もないですし…。去年、台湾で同性婚が認められた事が大きなニュースになりましたが、あの制度も同性婚が合法的に認められている国の国籍を持つ人同士だけ。台湾人同士、台湾人とアメリカ人などのカップルであれば問題なく結婚できますが、台湾人と同性婚が自国で認められていない日本人は結婚できません。セクシュアリティとナショナリティ、2つのカテゴライズで結婚できるか否か線引きされる世界というのも正直にいえば、理解することができません。
Taiki:もし日本で同性婚が認められたら…すぐにでもNoahと家族になりたい。ハードルは高いとは思いますが、子供がいる家庭を望んでいます。最後にLGBTsという様な言葉で僕たちは社会的に表現されていますが、それは異性愛者が分かりやすく理解するために作られた言葉だと思っていて。僕がNoahのことを好きな気持ちというのはストレートの人達と何も変わらない。「LGBTs」という言葉がなくなるほどに僕たちのような存在が当たり前になる社会を願っています。
PROFILE
TaikiNoah(写真左:Taiki/写真右:Noah)
世界を舞台にモデルとして活躍するゲイカップル。抜群のスタイルと端正な顔立ちを武器に、これまで世界的ファッションブランドのコレクションに多数出演。インスタグラムのフォロワー計12万人を超え、2人の日常が垣間見えると人気。
Taiki Instagram@taiki_jp
Noah Instagram@noah_bbb
取材・インタビュー/芳賀たかし
画像提供/TaikiNoah
記事制作/newTOKYO