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【マンガレビュー】 #おうち時間 で気になる青春マンガを一気読み◎ 胸キュンシーンにイケメンも…LGBTsがメインキャラで登場する3作品をピックアップ!
セクシュアルマイノリティを題材としたマンガと言われると、どうしても過度な性描写が多めだったり、「BL」「GL」のような作品を想像してしまっていた自分だけど、ここ数年で大手出版社からLGBTsキャラクターを主要キャラとした青年・少年向けコミックスが発行されていると知ったのは、つい最近のこと…。
「書く事ないならマンガレビュー書きなさい」と、酔うとセーラームーンの主題歌を3回連続で歌うと言われている編集長に言われるがままに検索して見ると、LGBTsをファンタジー的に扱うのではなく、日常生活でそばにいることを前提にした上で生きづらさや本音が描かれている作品が多いことにびっくりしちゃった!それだけじゃなくて、キュンとする描写もたくさん♡
爽やかで甘酸っぱく、時に残酷なシーンもあってLGBTsがリアルに直面している問題定義の要素もしっかり組み込まれている。今回はLGBTs当事者のキャラクターが出てくるマンガ『青のフラッグ』『しまなみ誰そ彼』『付き合ってあげてもいいかな』の3作品の読んだ感想を書いていきますっ。
青春オブ青春!
純度100%の恋愛模様が学生時代の記憶を思い出させてくれる『青のフラッグ』
(KAITO/集英社)
高校3年生へと進級した太一は高校生活最後のクラス替えで、小動物のように可愛いがどん臭い・空勢二葉、そして幼馴染みで人気者の野球部員・三田桃真と同じクラスに。太一はパッとせずいつも俯いている二葉に自分自身を重ねてしまい、心のどこかで苦手意識を抱いてしまっている。双葉が桃真に恋心を持っていると悟った太一は、双葉の相談役として頻繁に話す仲に。以来、2人の距離を縮めようとあらゆる手段を使って奮闘する。ただ、桃真が常日頃目を追っているのは、なぜか太一ばかり。
太一は桃真を映画に誘い二葉とその友人・伊達と街中で偶然を装って会うように計画をする。作戦は無事成功し4人で映画を観ることになるのだが、その後、太一と伊達の激しい口論によって、台無しになってしまう。その翌日に伊達は「背が高くて年上でスポーツができる、明るくてハッキリとした黒髪ロングのストレートの巨乳がタイプ」だと言う桃真を屋上に呼び出し「本当に好きなタイプは黒髪しか合ってないでしょ?」と告げた上で、顔を赤く染め焦った表情の彼に対して「あんた、私と一緒だね」と優しく微笑むーーー。
ここまでが1巻までのお話。2巻以降にならないと深くセクシュアリティについて触れる描写がないので結論から言ってしまうと、幼馴染みである太一君に片想いしている桃真君のセクシュアリティは、ストレートではなさそうね。「野球部・イケメン・人気者と3拍子揃った高校生の桃真君が男性を恋愛対象として見ている設定、とっても斬新!」と思ったけど、現実的に考えてみると桃真君みたいな男の子がいても、何ら不思議なことでもないのよね。
とにかくストレートもLGBTsのキャラクターも関係なくフラットに恋愛模様が描かれているのが本当に好き。もちろん「みんな仲良し♡」みたいな感じではなくて、LGBTs当事者なら経験した人が多いであろう異性愛者であることを偽ることによる苦しみや、逆にどうしてもLGBTsを受け入れることが出来ないキャラクターに関しても、差別や偏見といった形で受け入れることが出来ない訳ではないというのも、時代に沿った形でとってもリアル。
桃真君のように3拍子揃った国宝級イケメンでは当然なかったけど、高校生の頃には男子と付き合いたいという気持ちが明確にあったし、もちろん同じクラスの男子を好きになったこともあった。この作品を読んでいて、その気になる男子にプリントを渡された時に予期せず手が触れて「ごめんっ!」と口走った瞬間、ポカンとした様子で真っ赤な顔の私を見てきたことを思い出したわ。今思い出すだけで恥ずかしくて体が熱くなってくるけど、大切に覚えておきたかったあの顔や瞬間を一つ思い出せたと考えると『青のフラッグ』を手に取って良かったと思えてならない。今みたいに相手の素行や経済状況、連絡頻度、月に会える日数やお互いの居住地間の距離など、恋人としての関係地を築きたいか否かの判断基準を抜きにして、「なんか、好き」という純な気持ちで恋をしていた自分を懐かしむ瞬間が、この作品を読んでいて何回もあったわ。
まさか自分のようなセクシュアリティのキャラクターが登場する繊細なラブストーリーが『少年ジャンプ+』に連載されているなんて思ってもみなかったし、多くの方たちに愛されるサイトを介してLGBTsを何気ない日常生活の中で知ってもらえる機会があるということはとっても意味のあることだと思う。最近ではBL実写化ブームで大分、メディアや世間が思う「ゲイ/レズビアン」や「トランスジェンダー 」に対するイメージのズレというものが少なくなってきたのかなと思うけれど、『青のフラッグ』もそのズレを埋めてくれる影響力の強い作品であることは間違いなさそう…! とにかく桃真君がカッコ良すぎるので、気になる人は是非チェックしてみて!(桃真君と太一君が満員電車で密着してるシーン、あれ10分は瞬きせずに見てられたわ)
多様なセクシュアルの登場人物が「談話室」を通して
自分の愛し方を模索する『しまなみ誰そ彼』
(鎌谷悠希/小学館)
高校生の要介(かなめたすく)は夏休み目前、スマホの閲覧履歴をクラスメイトに見られてしまったことがきっかけとなり「ホモ動画」を見ていた事がバレてしまう。様々な口実を並べその場を凌ぐが、精神的に追い込まれ気づけば、自殺を考え崖に立っていた。茫然と立ち尽くしていると古民家の窓から女性と思しき影が、飛び降りるのを目の当たりにしてしまう。介は急いで古民家へと足を運ぶが、先ほど飛び降りた張本人「誰かさん」と呼ばれる人物は至って、無傷。そして、訪れた古民家は様々なセクシュアリティが集う空き家再生NPOコミュニティ「猫集会」のメンバーが集まる「談話室」であった。
自身のセクシュアリティに悩みを抱えた介だったが、猫集会での活動を通して自身と向き合う決意をする。さらには、ふとした事がきっかけで介が気になっていた同じ高校のバレー部・椿も猫集会の活動に積極的に加わるようになり…。広島県・尾道を舞台に描かれた性と生の青春の物語ーーー。
イ向けAVの動画を見ている事がバレるという一番避けたい最悪な事態に直面した介君のことは正直、目を覆わずに見ることはできなかったわ。学校という狭いコミュニティでの生活が一日の大半を占める中で、自分が一番見せたくないであろう姿を疑われた人たちがいる場所に向かわなくちゃいけないんだもの。朝シャン・歯磨き・着替え・ゲイ動画の閲覧履歴&タブ削除という4STEPモーニングルーティンを中学から大学生半ばまでの7、8年間、確実にこなしていた自分の慎重さを少しだけ称賛した。
学生時代にセクシュアリティが公になるということはなかったけれど、中学生の時に女子と話すことが多かったばかりにその女子グループの中の一人と付き合っていた男に呼び出されて集団で脅されて、1ヶ月ほど怯えながら学校に登校していたのを思い出した。だから、飛躍しすぎて自分自身を殺めてしまおうという考えが散らついてしまった介君の気持ちも分からなくはない。親や先生に相談するなんてことマイナスにしかならないと思っちゃうんだよね。
自身のセクシュアリティをクラスメイトに疑われ、精神的に追い込まれた彼の救いになったのが「談話室」。トランスジェンダーの内海さんをはじめ、レズビアンカップルの大地さんと早輝さん、自身のセクシュアリティが曖昧で度々女装姿で登場する少年・美空などLGBTs当事者がマジョリティとして交流できる場所になっているのだけれど、自身がセクシュアルマイノリティであることをネガティブに考えてしまう時期にLGBTs当事者に会うことがいかに大切なコトなのか、彼の心境の変化を見ることで改めて考えさせれたわ。LGBTs当事者との交流を通して「自分だけ…?」という思い込みが薄れ、自分の物差しのみで物事を判断することも少なくなるし、必然的に生き方の選択肢が増えるから世界の広さも気づける。
最近、私もありがたいことに介君のようにゲイ以外のLGBTs当事者の方とお会いする機会を頂いているけれど、そういった出会いからより豊かな将来像を考えられるようになったということはあるかもしれない。学生時代なんかはゲイの方たちとお会いすることが多く「LGBTs」の「G(ゲイ)」における多様なあり方はそれなりに分かっていたと思うけれど、ゲイ以外のセクシュアリティの方たちとお会いすることはもちろん、意識的に目を向けるということは正直なかったかも…申し訳ございません。
ただ最近は、学校でもオープンに働くFTM小学校教諭の方や平等な社会保障を求めて同性婚を国に認めるよう提訴したバイセクシュアルで三児の母でもある方、セクシュアルマイノリティの人が居心地の良い美容室を作るために奮闘しているレズビアンの美容師の方…とゲイ以外のセクシュアルマイノリティの方たちとお会いして話を聞いていくうちに、働き方や恋人、家族のことについて考える上で今までにない新鮮な意見を取り入れて考えられるようになったの。それまではどこか型に当てはめて、ゲイである自分が置かれている状況下の中で最大限の幸せとは何かを考えて生きてきたのだけど、そのさらに外側の選択肢を手に入れられたような気持ちになった。
『しまなみ誰そ彼』はLGBTs当事者、特にゲイにとっては精神的に読んでいて辛いと思う描写がたくさんあるけれど、それは自分自身を受け入れられず自己嫌悪・同族嫌悪の中で生きている椿君や、良かれと思って猫集会に積極的に参加しようとするストレートの小山さんなども含め、多様なセクシュアリティの社会的な声がとても反映されているからでもある。LGBTs当事者としては「まだそんなこと思っている人いるんだ」と思う描写もあるけれど、尾道を始め地方や田舎にはまだまだ偏った見方が残っているのかもと東京に住んでいて薄れかけていた問題意識を改めて持つようになったわ。多様なキャラクターが出てくるからこそ、1人は感情移入できるキャラクターが見つかるはず!
軽快、だけど同世代のLGBTsの本音が反映された
女子大生ガールズラブ『付き合ってあげても良いかな』
(たみふる/小学館)
ショートカットにぱっちりとした目が特徴的な、みわは大学入学後に軽音サークルへ所属。そこで出会ったのはお調子者の冴子。「絶対友達にならないタイプ!」だと思っていたが、積極的で頼りがいのある彼女と日に日に距離が縮まっていく。軽音サークルの新入生歓迎会の帰り道、冴子はみわに「男の子に興味がない」と伝え、自身がレズビアンであることを打ち明ける。一瞬戸惑ったみわであったが、自身もレズビアンであることを打ち明け、流れに任せ二人はその夜から付き合うことに。
純情なみわと何かと大雑把な冴子、サークルや学業、恋愛など充実した大学生活のスタートを切った二人の恋の行方は?ーーー。
私が今まで読んできた恋愛漫画といえば付き合うまでの過程を楽しむものが多かったけれど、この作品は1巻の冒頭で二人が早々に恋人同士になるの。同じサークルでたまたま出会った女の子が同じようにレズビアン、そしてお互いに悪くはない印象で飲み会の帰りに付き合うということになるという流れは、まさに「漫画みたい!」な展開。まぁ漫画なんだけど(笑)。ただ以降付き合い始めてからの日々はLGBTs当事者が共感できる、あるあるな出来事が散りばめられている。GL、BLを主としたマンガって極端にエロ、もしくはシリアスないしセンシティブに振り切られているイメージを持っていたけれど、大学生活を軸として二人、そして二人を取り巻く人間関係や環境も適度な温度、湿度で描かれているからスッと入ってくるんだよね。サークルのバンド仲間も二人が付き合っていても「へぇ~そうなんだ」程度のリアクションもいれば、二人の恋仲が気になって無邪気に質問攻めをする女子、それも異性愛者にも通ずる質問でLGBTsカップルに限定したものではない。この世界はみんな優しいんだよね。
1巻で中心に描かれているのは、純情で控えめなみわとオープンで積極的な冴子の生き方や価値観のコントラスト。みわはどちらかというと消極的で純粋、一方冴子は自ら女子と付き合っていることを公言したり、母親にカミングアウトしていたりオープンな生き方。一巻を読み終えてカミングアウトにおける考えを自然と頭の中で整理する瞬間があったから、そのことについて書いていくけれど、私の立ち位置は2人のどちら側に位置するのか考えたときに、みわ以上にオープンには生きれているけれど、冴子のように母親にオープンな訳でもない中間ラインといったところに落ち着いた。
こういった立ち位置にいるLGBTs当事者が割と多数派だと思うのだけど、どうなんだろう?でも、カミングアウトできていない自分が全くダメだとは思っていないし、バレちゃったらしょうがないよねぐらいのスタンス。確かに母親が自分の本質を受けてくれることはとっても嬉しいことだろうなと思うけれど、私の母親は恋愛ドラマやゴシップ好きということでもなければ、そういった話題を兄弟に振っていることも見たことことがない。要するに子供の恋愛とか彼女の存在とかを気にする素振りを見せたことがないんだよね。親と子がプライバシーのラインをなんとなく意識しているというか。それに「恋愛」「セクシュアリティ」について話さずとも母親とのお喋りやご飯を食べに行ったりすることは心の底から楽しめているし、私の恋バナなんかがさまぁ~ずの街ぶら番組や空港で出会った外国人に密着する番組(母は素人に密着する番組が大好き)より母の興味を引くとは到底思えない。
簡単に言えば言いたくないのではなくて、言ったところで会話のネタにならないから言わないだけなの、絶対盛り上がらないもん。生き方や属するコミュニティ、年齢など様々な条件が重なり合って生きづらさを感じていたなら別だけど、今は自分の居たい場所を選んで生活できているから言う必要性を感じないというのもあるかもしれない。まぁ本当は私がゲイだということを気づいていて、私が話すのを待っているのかもしれないけれど(笑)。
この他にも、恋人同士ならではの初めての夜に対しての考えの違いやLGBTs当事者の周囲にいる人たちの肯定的かつ胸に刺さるセリフ(というか同性カップルという存在を自然に受け入れている様子)なんかからも色々と感じ取れるものがある漫画だと思った。ノンケの恋愛ドラマで泣けるぐらい感情移入できるのだから、レズビアン2人をメインキャラとしたマンガに共感できないということは無いわよね(笑)。とっても軽快で読みやすい作品でした♪
さて、お家で過ごすことが多くなり、ゆっくりと丁寧に自分を見つめ直せる時間がある今。この3冊を通して、きゅんきゅんしながら考え方を広げるのもいいかもしれませんね♡
記事作成/芳賀たかし(newTOKYO)
撮影/EISUKE
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