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次世代を予感させるパーソナルアパレルブランド『SHIN』 20代カップルのセクシュアリティとの向き合い方とは?

プリーツやギャザー、異素材ミックスなど遊び心のある先鋭的なデザインと流線的なシルエットが、性別問わず感度の高いファッショニスタたちに支持されているブランド『SHIN』。立ち上げたのは現役服飾学生の真さん、現在は恋人である隆さんもデザイナーとして加わりアイテム展開している。
ファッションがきっかけで繋がり、恋人、そして仕事仲間として愛を育んできた彼らは、むしろ仕事もプライベートも隔てなく一緒にいる時間が長いからこそ良好な関係を築いていけると話す。
今回はお互いそれぞれどのような存在なのか、自分らしく生きるために大切にしていることを伺った。

ファッションがきっかけで知り合った、真さんと隆さん。
告白はDJイベント終わりの堂山町で…

隆:自分がゲイかもしれないと頭を過ったのは、とある男子の先輩に「同性としての憧れ」ではなく「恋愛感情としての好意」を抱いていると気づかされた高校一年生の時。彼への気持ちを抑えられず「カッコいい、カッコいい!」と周囲に話していたら、友達に「その気持ちは恋愛対象として好きなのかもしれないね」と言われたことがきっかけでした。最初は「普通の男子」ではないということを受け入れられず、また周囲にも知られてはいけないことだと思っていたので、女の子と付き合うことで普通を装っていた時期もありました。

真:僕は高校一年生からおよそ三年間付き合っていた彼女がいたのですが、その時間の中で彼女、ひいては今まで女性に抱いていた感情を男性にも同様に抱くことがあり「自分はバイセクシュアルなのではないか」という気持ちが次第に大きくなっていきました。そんなモヤモヤした気持ちに整理がつかないまま、彼女の大切な時間を頂くのは申し訳ないなと思い自身のセクシュアリティを打ち明けた上で、彼女に別れを告げました。幸いにも彼女は、僕を受け入れてくれて嬉しかったというかホッとしましたね。それから友人に連れられて足を運んだ堂山町でゲイの方たちと時間を共にしていくうちに「自分はバイじゃなくて、ゲイやな」とセクシュアリティが明確に分かった瞬間みたいなのがあって、今は男の子と付き合うことが自分の中で一番しっくりきています。

隆:ツイッターで真が僕をフォローしてくれたことが二人の出会いのきっかけでした。お互いファッションに強い関心を持っていて話も合いそうだったので、インスタグラムでも繋がることになり彼のアカウントを教えてもらったのですが、それがなんと二年前くらいからファッションセンスが好きでフォローしていた人だったのでビックリしました。

真:それから約一ヶ月後、僕が出演していたDJイベントの日に会うことになったのですが、プレイを見ていた隆に30回ぐらい「惚れた!」と言われたのは今でも覚えています(笑)。

隆:そんな言ってないって(笑)。それから堂山のゲイバーに飲みに行き、酔ってベタベタしてくる真を冷たくあしらって泣かせてしまうこともありましたが、帰り際に僕から告白して付き合うことになりました。

「ファッションは内面を映す鏡」
SHINを通して広がるコミュニティ、深まる二人の愛

真:『SHIN』は元々、趣味の延長線上で始まったブランドで服飾学生一年の後期からインスタグラムに自分で作った洋服をアップしていたんです。感覚的には個人で着たい服を作って記録として残していただけなのですが、フォロワーがどんどん増えていくのと同時に「欲しい」という声が多く寄せられるようになりました。そのような声にお応えする形で最初はフリマ感覚で売っていたのですが、嬉しいことにアップしたアイテムが全部売れたので、いっそのことブランドにしようとタグを作って本格的にスタートさせました。

そのためコンセプトとかは全くなくて…ただ周りの人からは「ジェンダーフリーなアイテムやなぁ」と言われますね。
着用対象の性別を意識してデザインしたことは一度も無くて、自分自身がメンズ、ウィメンズといったカテゴリ問わず良いと思ったアイテムを着ているので、結果的にジェンダーフリーなデザインになっているのではないかなと思います。

隆:付き合うようになってからは、真は引き続き洋服を、僕はリングやアートなどを中心に制作しています。僕自身も過去に服飾の専門学校に通っていたのですが、当時から憧れの存在だった人と一緒にお仕事できているのは嬉しいですね。

真:仕事もプライベートも一緒の時間を過ごしていると良好な関係性を保つのが大変だと思われるのですが、むしろその逆で話題が尽きないからお互いの新たな一面を日々見つけることができる。隆の尊敬できる点でもある、一つの物事に注ぐ集中力がゲームや音楽といった娯楽に限らず、仕事においても同じであるということはやっぱり一緒にブランドを運営していなかったら分からなかったことですし。僕は飽き性で集中力も続かないので、凄いなと感心します。

隆:確かに。リスペクトの心を忘れずにいられるのは、SHINのデザイナーという立場で彼のセンスを身近に感じられる環境、関係性も大きく影響していると思います。

「セクシュアルをオープンにしたら“ゲイいじり”がなくなった」
ありのままの自分たちを大切にする二人が描く先は?

隆:僕自身のセクシュアリティや真と付き合っていることは、友人や職場の人たちには話しています。正直、打ち明ける時は緊張したけれど、相手から「え、今さら?知ってたよ」といった反応が返ってきた時は、あまりにもナチュラルに受け入れてくれたこと、そしてセクシュアリティについて干渉してこなかった優しさに触れて、今まで何を必死に隠していたのだろうという気持ちにもなりました(笑)。親は気付いているとは思うのですが、訊かれるまではカミングアウトしなくて良いかなと考えていて、まだ面と向かって話したことはないですね。

真:僕はインスタグラムの投稿を通して友人や後輩、先生たちに自身のセクシュアリティについて打ち明けました。それまでにゲイバーでの出来事をストーリーズにアップしていたので、カミングアウトへの抵抗感は薄かったです。ただ、家族にはどうしても言い辛くて…。隆と付き合うようになってからはお揃いのアクセサリーを身につけたり、同じヘアスタイルにしたりして二人で実家を出入りすることも多かったので、家族に関係性を問われることがありました。その後、母親と二人きりで飲みに行って正直に話すと色々と思うことはあったみたいですが、最終的には受け入れてくれました。

隆:お互い、付き合い始めてからインスタグラムでは恋人同士であることを公言しているのですが「彼女はいるけど、気になる男の子もいて自分が分からない」というようなセクシュアリティに関する相談を同年代から受けることが多くなりました。こういった質問に関しては明確な答えはないと思っているのですが、一つ言えるとするならば時間がゆっくりと解決してくれるということ。周囲の偏った見方で傷つくこともあるかもしれないけど、それでも自分の人生は一つの道しか選べないし、巻き戻すことはできませんよね。

それならネガティブな意見をスッとかわして、自分に自信が持てるような何かを見つけることに時間をかけてみるというのはどうでしょうか。僕も沖縄に住んでいた当時は隠していたけれど、大阪に来て環境も人間関係もゼロからスタートさせて、真と出会って付き合うことになって…。彼にありのままの自分を愛され、認められていることが自信に繋がるようになった。些細なことでも良いので、毎日に変化があったら自信に繋がるきっかけに出会えるんじゃないかなぁと思います。

真:カミングアウト前は僕のセクシュアリティについて知らなかった男友達同士の会話の中で「ゲイやん、それ」「お前ゲイかよ!」といった言葉を聞くことは珍しくなくて、そう言った言葉が心にグサッと刺さる時もありました。ただカミングアウト以降、僕の周りの友人からそういう言葉を聞くことが一切無くなったんですよね。それがとにかく嬉しくて。今では冗談半分で「狙われてる!?」とか言われることもあるのですが、「いや、お前全くタイプちゃうから」など冗談を言い合える仲になって、また一つ距離が縮まったような気持ちでいます。

隆:真とはこれからもずっと一緒にいたいなと思っていて、最終的には二人でお店を出したい夢があります。ブランドも続けつつ、僕たちの目で選んだアイテムを販売するセレクトショップとか。

真:そうだね。あとは、日本で同性婚ができたら最高ですね。恋愛対象が男性ってただの個性じゃないですか。人間が生きる上で必要不可欠な食べることや学ぶことと同じくらい、心から好きな人と恋愛をすることって大切なことだと思うんです。好きな人と結婚するという選択肢を与えないという国の姿勢には疑問を抱いてしまいます…。

つい最近、隆が憧れてると教えてくれて知ったのがTaikiNoahのお二人。自分たちが持つ武器を最大限に活かし、ファッションシーンで活躍する姿が凄くカッコいいなと思って。僕たちもファッションシーンで彼らのようなアイコン的存在を目指していきたい。欲を言えば二人で作ったアイテムをTaikinoahさんに着てもらえたらいうことはないです。今は『SHIN』としてのお仕事をしながら、隆との将来を想像することがとっても幸せですね。

PROFILE


職業:「SHIN」デザイナー、服飾専門学生
出身:大阪府
年齢:21歳
セクシュアリティ:ゲイ
趣味:服作り
Instagram@shin_pq


職業:「SHIN」デザイナー、タピオカティースタンドスタッフ
出身:沖縄県
年齢:22歳
セクシュアリティ:ゲイ
趣味:絵を描くこと
Instagram@iro_uech

インタビュー/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO

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