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同性カップル、HIVポジティブ、GIDの方も加入可能な「パートナー共済」 LGBTsの未来を明るく照らす「R&C株式会社」の熱意がスゴイ!

もしも自分自身が不幸に見舞われた時、誰もが大切な人への想いをお金という将来を支えるカタチとして残したいと思うことだろう。一般的に考えると生命保険への加入で前述した問題は解決することがほとんどであるが、LGBTsカップルにとっては加入そのもののハードルが高いのが現状だ。
そんな中『R&C株式会社』が開発し、2020年5月25日に申し込み受付をスタートした、「パートナー共済」。同性パートナーを受取人とすることはもちろん、条件を満たしていればHIVポジティブやGIDのホルモン治療中の方でも加入ができるというのが最大の特徴で、申し込みスタート以前から話題となった。

今回は、そんな当事者目線に立った新たな共済を展開した、R&C株式会社代表・足立哲真さん(写真左)、そして発起人であるパートナー共済推進室長・小吹文紀さん(写真右)にパートナー共済を通して目指す理想の社会を伺った。

「LGBTsフレンドリーな仕組みが社会・人を変えていく」
当事者たちが「保険・共済」を選べる社会づくりに貢献したいと思った

小吹さん:2016年~2019年まで損害保険会社でお仕事をしていたのですが、2017年1月からその保険会社の約款に記されている「配偶者」の言葉の定義に従来からあった「婚姻関係にあるもの」「内縁にあるもの(事実婚)」に加え「戸籍上の性別が同一であっても、婚姻関係と同等にあるもの」と同性パートナーも新たに対象とすることが明記されました。

具体的に何が変わったのかというと、分かりやすいものであれば自動車保険の夫婦プランや海外旅行保険の家族プランなどが同性パートナーであっても適用されるようになったということ。以前までは同性カップルの場合、各々が保険に加入しなくてはいけなかったものの2人が同じ保険に加入できるというのは単純に費用を抑えられるという経済面だけでなく、セクシュアルマイノリティの方たちを受け入れる仕組みが確立したことで社会的にも大きな意義を持つ改定となりました。

それに伴い私自身も、同性カップルのお客様の保険加入手続きから『TOKYO RAINBOW PRIDE』やメンズ下着ブランド『TOOT』といった法人のお客様の損害保険を担当する機会が多くなり、いつの間にかLGBT関連のフライヤーや下着のカタログなどをデスクで広げることも決して珍しい光景ではなくなっていました。まだ「LGBTs」という言葉すらない一昔前であれば、私自身のセクシュアリティを疑う視線、もしかしたら攻撃的な態度を取られたとしてもおかしくはなかったと思うんです。ただ、時代と共にセクシュアルマイノリティへの歩み寄りが進む社会、そしておよそ1万人の社員全員がLGBTs研修プログラムを必須で受ける企業ということもありLGBTsへの正しい理解・認知をしている社員がほとんどであったため、誰しもが偏った見方やフィルターを通さずに接してくれていたように感じました。

このような環境で業務に従事していて、ふとした時に以前よりも心がずっと軽くなった感覚を覚えて。同時に長年「セクシュアリティを他人に知られてはいけない」という緊張がどれだけ自分にストレスを与えていたのか分かった瞬間でもありました。昭和40年生まれで大人になったら結婚することが当たり前という風潮の中で自らがゲイであることを自覚したうえ、結婚という選択肢を選び息子も授かったものですから世間から結婚適齢期を過ぎた独身男性というようなネガティブな視線を感じることはなかったし、「同性婚法制化」についても強く関心を持つことはありませんでした。 
ただ、自分の気持ちを無自覚に抑え続けていたことへの気づき、その抑制から解放される経験を経て法律を含め「仕組み」ができる、または変わることで困っている人だけではなく社会全体も変わるということを学び「新たな選択肢」が増える、そしてその選択肢を選ぶことができる雰囲気・社会というのがどれだけ大切であることが分かったんです。そのような気づきの中で自分に何ができるか考えた時、LGBTsの方たちが保険に対して抱えている諸問題を解決できるようなプランを世の中の仕組みとして新たに普及させたいという気持ちが強くなり、ここR&C株式会社への入社を決意しました。代表との最終面接の際には「LGBTs支援活動も含めて、私の採用をご検討ください」と一言添えて履歴書を手渡したことを未だ鮮明に覚えています。

足立さん:最終面接…というよりはむしろ彼によるプレゼンの場と言った方が正しいかったかもしれません(笑)。LGBTsという言葉はもちろん知ってはいましたが、LGBTs当事者が従来の仕組みでは自分自身が納得できるような保険を選択できないという現実、パートナーシップ制度を行使した保険加入はあれど、いわゆる男女間の婚姻あるいは内縁関係、家族同様の契約フローや内容とは大きく異なることなどを具体的な事例を交えた上で、そういった問題を改善した保険プランを提案してくるわけですよ。同時に、前に勤めていた損害保険会社で同性カップルの契約を担当した際の経験や各種LGBTsイベントでの出来事などを語る姿を見て熱意が伝わってきました。

社会的マイノリティとされる方たちに向けた保険サービスというのは前々から取り組みたいと思っていたことの一つだったので「ないなら作っちゃおう」と。彼には入社して間もなく、「パートナー共済」に力を入れてもらうことにしました。

LGBTsを悩ます保険にまつわる三つの壁を「パートナー共済」でフラットに
マイノリティへの保険の間口を広げるR&Cが目指す社会とは?

小吹さん:「パートナー共済」を生み出す上で、以前まで在籍していた損害保険会社も含めて保険業界ではどうしても乗り越えることが難しかった、LGBTs当事者が保険に抱く3つの大きな悩みに対する改善に重きをおいたサービスを展開したいと考えました。

一つ目は同性パートナーの共済加入の流れについて。同性パートナーシップ制度を利用している同性カップルの保険加入を認める保険会社の数自体は多くなってきたものの、異性同士の婚姻及び内縁関係が保険加入の際に必要ない書類の提出や面接の場を設ける企業がほとんど。多様な性、生き方を認める姿勢を示す一方で契約までの流れが大きく異なることに違和感を抱いていました。また「保険」というのは金融庁が所轄官庁である保険業法のもと対面で契約を交わさなければいけないのですが、カミングアウトやアウティングに繋がりかねないと心配するLGBTs当事者の方も多いはずと思っていました。

これらLGBTs当事者が保険へ加入するにあたって二の足を踏んでしまうような問題を解決すべく、私たちはプライバシーを守りつつ全国から申し込めるよう、「共済」という形を取ることで対面ではなくウェブで契約が完結するフローを確立しました。また多様な性を認めるという観点から性別をお聞きする項目がないため、ジェンダーによって保険料が変動するということありません。 

そして、二つ目がHIVポジティブが加入できる仕組みづくりです。海外ではHIVポジティブの方たちに向けた保険というのはごくごく一般的に存在していますが、現在の日本においてはHIVポジティブの方が加入できる生命保険というのはごくわずか。現在の医療技術は格段に進歩しており効果的な服薬治療を継続すれば、例えHIVに感染したとしてもU=U「(HIV)検出限界以下になる=感染しない)の状態を保つことができます。人に移すことなく感染前と変わらない生活を送れるのにも関わらず、なぜ断られるケースが未だに多いのか。それはHIV感染者のデータが保険会社に蓄積されていないから。保険というのは「確率」に重きを置くサービスなので、データがなければ各企業、失敗を恐れて取り組もうとしない傾向が強いのです。

三つ目はGID(性同一性障害)でホルモン療法中の方も加入できる仕組みづくりです。2018年、WHOが「国際疾病分類」からGIDを外したものの、未だに日本では精神疾患として認定されている。すると、どうなるのか。精神疾患を抱えている方というのはHIVポジティブ同様、保険に加入することが難しいんです。さらに言うと、戸籍上の性別を変更する場合は生殖腺がないこと、もしくは生殖腺の機能を永続的に欠く状態でなければいけないという項目は、日本以外のG7と呼ばれる先進国から人権問題に関わる大きな問題であると是正勧告を受けていますが、未だに改正する姿勢を示していません。

「知らないことは排除」。人の命に関わるお仕事として、そのような風潮に流され、彼ら彼女らの存在を無視することはできませんでした。そのため、私たちはHIVポジティブ、GIDの方たちのデータに基づき健康診断の判定基準となる基準値を設定した上で健康状態に異常がないと判断した場合「パートナー共済」にご加入いただけるようにしました。 

足立さん:2020年5月25日に申し込み受け付けをスタートしたところ、予想以上に反響とお問い合わせをいただいており、他保険会社で断られてしまったという同性カップルのお客様から具体的な相談をお受けすることも珍しくありません。LGBTsを悩ます三つの壁をクリアにした「パートナー共済」。もちろん彼ら、彼女らに向けた共済ではありますが、加入してほしいという気持ちだけではなくて。マイノリティの方たちを受け入れる「仕組み」を通して、「保険に加入することができる」という選択肢を提示し、少しでも心にゆとりを持って生きてもらえればという思いも込めています。LGBTsフレンドリーな保険代理店、そして「パートナー共済」があるということが頭の片隅にあれば、心の拠り所としても在れるのではないかなと。

「パートナー共済」は我々が理想とする社会を目指すにあたって大切なパーツではあるものの、第一歩に過ぎません。日本に数十社あるうちの一つの保険会社ですが、このようなサービスを生むことで保険業界全体が変わる一石を投じ続けられればと思っております。「社会性と経済背の両立」、私がR&C株式会社を設立するのに当たって設けたテーマです。社会課題の解決が会社の利益に直結するということが、企業にとって一番理想的な形ではないでしょうか。社会的マイノリティとされる方たちの生活を守るサービスや仕組みを作り、そのお代をいただいた上でお客様を守る。そうして得たお金の一部を寄付や出資といった形で社会へ還元するという循環がより良い社会へと繋がるのと信じています。

今後はLGBTsだけではなく、身体・精神障害を持った方やダブルマイノリティの方など社会的にマイノリティとされている人たちに向けたサービス展開を拡充できればと考えております。そうしてできたいくつもの社会循環が相互に作用することでコミュニティが大きくなる、結果的に世の中により可視化されやすくなれば、彼らに向けたモノやサービスが全国的に派生しやすい環境になる。

いつか、マイノリティという言葉の存在が嘘だったかのように皆が平等に生きれる社会が来るよう少しでも貢献できればと思っています。

R&C株式会社

保険を通じてお客様が本当に「守り続けたいもの」の繁栄を持続可能にするためのソリューションを提供している総合保険代理店。今年の5月からグループ会社である『株式会社ダイバースパートナーズ』から、今までないLGBTsフレンドリーな共済「パートナー共済」の申し込み受付をスタートを開始、現在までに多くのLGBTs当事者から反響、問い合わせが多く寄せられている。

https://www.randcins.jp/
パートナー共済公式Twitter Twitter@Partner_Kyosai

取材/芳賀たかし Instagram@takapiii_new
写真/新井雄大 Twitter@you591105
記事制作/newTOKYO

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