TALK
ずーっと名古屋に住んでるから分かるLGBT事情 その②~名古屋のLGBTアイドル~
樹梨杏(じゅりあん)
愛知県出身
セクシュアリティ:バイセクシュアル
『LGBTQはどこにでもいる存在だと伝えたい!』
そんな想いで2011年アイドルグループ NSM+を結成。ダンサー、講演会、MC、モデル…と全国で幅広く活動中
凛としとりな
名古屋にはLGBTQのアイドルグループがあります。
今日は私が所属しているNSM+(NSM48)の結成についてお話しします。
現在は
『NSM+(Nagoya Sexual minority Plus)』
名古屋 セクシュアル マイノリティ(性的少数者)プラス
”プラス”の意味はセクシュアルマイノリティの人を含めマイノリティ(少数者)の人が出来る事が増える事・全ての人達にとって優しい社会になればいい。そんな気持ちを『+』に込めています。
そう思えたのは活動して3年以上経ってから。
グループの結成は2011年1月。
当初は AKB48をもじった NSM48の名で主にAKB48の振りコピーをしていました。
LGBTのアイドル 結成のきっかけ
今でこそ、アイドルがLGBTであることを自由に公表しています。最上もがさん、AKB48岡田奈々さんなどカミングアウトして、徐々に自分らしく生きられる時代となって来ていますが、10年前はまだそんな世の中ではありませんでした。私自身も・・・。
名古屋の野外LGBTQイベントは大きく2つあります。
一つはパレードのように世の中に発信していく啓発イベント。そしてもう一つはHIVをはじめとする感染症などの啓発イベントと、セクシュアルマイノリティの出会いを目的としたコミュニケーションイベント。
『楽しさ、多様性、名古屋オリジナル』を基本とし『自分のこと、お互いのことを知り、認め合い、仲間を見つける機会をつくる』イベント。
そのイベントこそが私たちNSM48の始まりです。
私に話があったのは”まさかの職場”。
当時名古屋のテレビ局の受付のお仕事をさせて頂いていたのですがある日、同じ局内でカメラマンアシストとして働いていた大学生アルバイト唯ちゃんから「(2011年当時)名古屋にゲイの中心のイベントがある。私はそのスタッフをしているのだがゲイ以外の他の少数者も一緒に盛り上げたい、手伝ってもらえないか?そう声をかけられました。
唯ちゃんは何故どうして私が声をかけられたのか?
まさか、レズビアンだと気づかれたのか?
ゲイダーに引っかかった?
私が20代の時によく友達同士で話題にでた
「ゲイダー(ゲイレーダー)」
勝手に行動や癖や見た目から「あの人レズビアンじゃない?」って仕事中にもチェックしていました。
…完全偏見なのですが仕事中の密かな私の楽しみでした。
受付という立場から毎日人の手先を見ることも多く「爪」に関してはよく勝手にチェックしてました。
これはエッチの時に関係するお話しなのですが爪が生えていると傷つけてしまうことになるので基本的に指の爪を短くしている人…特に中指と薬指の爪が短い人はレズビアンかも!と勝手に妄想していました。(ごめんなさい…)
唯ちゃんにとりあえず話を聞くと「なんかみたことあるな…ってずっと気になっていてよくイベントで見かける人だ!」と思っていたと。
当時、私は名古屋でずっと続いているレズビアンイベントでスタッフとしてお手伝いをしていたり、レズビアンばかりのスポーツ大会やBBQなどをさせていただいて、確かにどのイベントにもいた!(笑)
なら話は早い!!
「お断り」でした。
20代前半、周りにカミングアウトしてなくてもやっと念願の一人暮らしで、クラブでは女の子に囲まれて飲んで騒いで、それなりにモテ期だったんです。しかも、何より7年片想いした人とお付き合いもできて・・・。
「啓発活動ってかっこ悪い」じゃんって思っていました。
何より断った1番の理由は「親にバレる可能性あがるじゃん」ということ
その上
「そもそも啓発する必要あるの?」
性的少数者のパレードなどが開催されていることも知っていました。
何のために?
人権を認めろ?
見たくなかった。
ほっといて。
「これを見た当事者は何を思うんだろう」って…
迷惑だなと。
これは今でも時々思います。
あなたは1人じゃない。他にもたくさんいるのだよ。
…んーだから何?って。
法律では結婚できないのでしょ。(当時はパートナーシップもなかった)
法律って国のルール。
「正しいこと」
同じく教科書も社会のルール。
「正しいこと」
少なくても10年前は誰も何も性的少数者を「正しいこと」として私に教えてくれなかった。
差別の定義もわからないけれど少なくても「嫌悪感」からきているのかなって。
それを「当事者ではない人たちに一方的にわかって欲しい!」だなんて無理でしょう。
もし嫌悪感を抱いている方がパレードを見ていたり、イベントを知った人が「気持ち悪い」と声に出したら…
余計なことをして傷付きたくない。
そう思っていました。
でも、そんな私がNSM48としてイベントに出演した理由は本当に唯ちゃんが、しつこかったからです。
毎日受付までやってくる。毎日毎日。
無邪気な笑顔と、唯ちゃんの情熱にやられて、とうとう「1回だけね」とお手伝いすることにしました。
唯ちゃんは本当に素直な人で「どうして私じゃなきゃあかんの?」ってきいたら「1番友達多そう」って。
私のことよく知らないのにね、それにもっと嘘でも違う理由をつけられなかったのかな?(そこが好きで負けました)
さて、啓発イベントのステージで何をすれば良いの?
唯ちゃんの推しで、最初からダンスチームをやりたいってことで私の意見関係なく、AKB48の振りコピー団体に即決まりでした。
次はメンバー集め。居酒屋で一人一人電話やメールをしてお誘いしたりレズビアンBARにチラシを貼ってもらいに行きました。
でも、なかなか集まらない…。
理由は私と同じ。社会的に顔バレしたくない。
啓発イベント開催まであと半年、ダンスなど練習を入れると1ヶ月で集めたい!
そんな中、レズビアンイベントでドリンク奢ったり、ご飯奢ったりってメールや電話をしたり…
社会的に顔バレもあるのに、OKしてくれた一番の理由は私の”しつこさ”。
「お願い!1回だけ…。なんでも言うこと聞くから」
唯ちゃんとそこは似ているかも。
これで集まったのが初期メンバー12人。
名古屋嬢…って言う言葉がぴったりなくらいに髪の毛盛り盛りのメンバーがたくさん…(笑)
私も紫のカラコンだった。
こうしてメンバーは集まった、さあ練習。
でも、誰一人ダンス経験者がいない!!YouTubeにたくさん動画は上がっているのについていけない。
当時、6人6人でチームを分けて練習していました。
リーダーも私と唯のダブルリーダー。週1、2の練習で5ヶ月間かかって完成した曲数は1グループ2曲でした。
私のグループは「会いたかった」と「ヘビーローテーション」
こうして初めて啓発イベントにステージに立ちました。
そんな、私たちを待ち受けていたのは!
客席にお客さんいっぱい!
今までレズビアンのお友達しかいなかったのですが半分以上はゲイのお客さんで…自己紹介するとコールもしてくれるし一緒に盛り上げてくれる!
初めての出演、大成功でした。
そして、その日のうちに次のオファーも受けました。
まだこの時は私に「啓発」の言葉なんてなかった。
ただ、楽しかった。それが今からちょうど10年前の6月でした。
最後に改めて、”しつこい”唯ちゃんについて少し話たいと思います。
NSM+(NSM48)での、唯のキャッチフレーズは
「3度の飯よりビールが好き!」
対する私は
「みんなーの夜(夢の中)の恋人」でした。
そんな、性格も全然違う唯ちゃん。
唯からもらった言葉で一番印象的な言葉は「出過ぎた杭は打たれない」
本当に挑戦的な子です。
今も昔も変わってない。
そんな唯ちゃんだけれど自分の親はカミングアウト(性的指向等を話すこと)はしていませんでした。
なのに唯ちゃんは当事者の為のイベントだけではなくパレードのような世の中に発信するイベントに関するスタッフもしていました。
活動を続けて数年後、活動記事が世の中に出ることになった大晦日に唯ちゃんはお母様にカミングアウトをします。
まず、記事を見た家族や親戚にびっくりさせてしまうことについて。
それから「お母さんも何か言われたらごめん」とメールをしました。
私も時々いまだに活動が怖くなる。
そんな時に思い出すのが今回の題名にもさせていただいたその時の唯ちゃんのお母様の返信。
「凛としとりな」
私にとってもすごく大切な言葉。
私は性的少数者であること。
私は34歳でアイドル?
私はいくつになっても好きな服を着ていたい。
私は好きな場所に行きたい。
私はやったことがないことに挑戦してみたい。
これだけじゃない。
TPOわきまえた上で「悪いこと」じゃないことでも
これだけじゃない。
毎日を過ごす上で自信がなくなることってたくさんある。
だけどそんな時いつも思い出すのがこの言葉。
私の行動を後押ししてくれる言葉にしっかりとなってます。
まだ誰かにこの言葉を直接言えるほど経験を積んでいないけれどこの言葉がまたこの記事を読んでくださった方の何かに刺さるといいな。
PROFILE
樹梨杏(じゅりあん)
セクシュアリティ:バイセクシュアル
生年月日:1986年5月7日
出身地:愛知県
公式Twitter:Twitter@julian_cloj112
公式インスタ:Instagram@nsm.julian
公式 NSM+ホームページ:http://nsm-plus.com/
『NSM+(Nagoya Sexual minority Plus)』の曲はこちらからチェック!