STUDENT COLUMN
大学生LGBTsコラム 【LGBTs×発達障害。ダブルマイノリティのわたしが追い求めた居場所】
「自分らしく生きるプロジェクト」サイトをご覧のみなさま、はじめまして。立正大学3年生の「いな」と申します。セクシュアリティはXジェンダーかつパンセクシュアルに近いです。わたしのセクシュアリティをわたしらしく示すと、「異性はいるけど同性ってわからない!」「恋愛の条件はおもしろい人!」という感じです。既存の言葉で表現することや既存の感覚を共有して共感することを、わたし自身は望んでいません。
また、わたしは社会的コミュニケーションを苦手とする自閉症スペクトラム(ASD)という発達障害の診断を受けています。ASDのわたしならではの困り事は「本気と冗談の区別がつきにくい」「TPOに応じた服装を理解しにくい」などです。
わたしは大学2年生のときに「生きづらさ」を抱える人や「生きづらさ」に興味を持つ人を集めて、立正大学LINKという課外活動団体を設立しました。わたしがLINKを設立した理由には、ダブルマイノリティならではの体験と、そこから抱いた熱意があります。
「当たり前」を共有しておらず、居心地の悪い大学生活
わたしは中学校の頃から、人間関係にモヤモヤとしていました。
恋愛(おもしろさが愛に直結する)や趣味(女性アイドルってかわいい!メイドカフェって素敵!)の話をすれば、モヤモヤしていたわたしは、初対面の同級生と仲良くなる話題が見つかりません。
通信制高校を卒業し短期大学を退学してから立正大学に進学したわたしは、高校トークにもモヤモヤしてしまいます。
そして、大学1年生のときも、わたしは大学に居心地の悪さを感じていました。
「いつ女性も愛せるって気が付いた?」「メイドカフェに女性客はいる?」「通信制高校って3年で卒業できる?」は、もう聞かれ飽きているんです。「いつ異性しか愛せないって気が付いた?」「ディズニーランドに男性客はいる?」「全日制高校って3年で卒業できる?」って質問され続ける人はなかなか見当たらないのに……!
困り事は共有できないから、困り感を共有する居場所を作る
大学1年生のある冬の日、必修科目の前後になぜか笑顔で挨拶してくれる同級生に勇気を出して挨拶以外の声も掛けて、自分のモヤモヤの一部を打ち明けてみました。こんなセクシュアリティだし、発達障害だって抱えている。わたしの悩みを活用する方法ってなんだ?と相談して、「生きづらさを抱えている人を集めて、居場所を作ろう!」という結論を出しました。
それから半年後に、立正大学LINKは大学公認団体になりました。SNSを活用して会員を募集したところ、LGBTs当事者や発達障害当事者、通信制高校出身者も含め、様々な経験や困難を持つメンバーが集まりました。会長のわたしと共有できる生きづらさを抱える仲間もいれば、違う生きづらさを抱える仲間もいます。生きづらさの背景が違うからこそ、わたしはLINKから社会の様々な困難に目を向けやすくなりました。
モヤモヤを抱えて生きるから、他人のモヤモヤにも関心を持つ
LGBTsが社会のなかで苦労しているとき、そこではたいていLGBTs以外の人も苦労しています。LGBTs当事者に発達障害のことを、発達障害当事者にLGBTsのことを話せば、双方から驚きの声があがります。都心で生まれ育ったわたしが地方出身者の苦労を知れば驚きました。右利きのわたしはSNSの「#左利きあるある」にも驚きました。大学の授業のなかで先生が「授業で『選挙に行こう』と言ったら、このなかに日本国籍を持たない学生がいた場合、傷つくかも」と言った日には、日本社会で国籍に苦労しないわたしがハッとしました。
今まで生きてきたなかで、多くの人が「自分らしく生きる」ことが大変だと痛感した出来事を持ち、その理由は人それぞれ異なるようです。わたしには、都会と地方の賃金差の是正も、右利きでも左利きでも使いやすい調理道具のデザインも、日本国籍を持たずに苦労した人の国籍の手続きもできません。同性婚の合法化だって、誰もが入りやすいトイレの普及だって、レインボーフラッグをたまにフリフリする当事者のわたしからやっていることは、1人分の署名やちっぽけな主張くらいです。様々な人の苦労を直接的に解決することには、わたし以外の誰にでも限界があります。直接解決できるのは、直接解決できる権力や技能がある人だけです。
しかし、苦労に寄り添うことであれば、不可能とは言い切れません。まだまだ視野の狭いわたしは全員に寄り添うことは難しくても、周囲の教えと言うメガネで狭い視野を矯正しながら、誰にもグサッとした負荷をかけずに生きていたい!!わたしはわたしがセクシュアリティを含む様々な要素でモヤモヤした半生を経て、自分も目の前の相手もまだ見ぬ誰かも共に幸せになれる世界の作り方を追い求め続けます。
大学3年生
立正大学LINK会長
いな