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人生と旅は選択の連続 東京→鹿児島 1,300km歩いて日本を繋ぐ 第12章

 男でも女でもないXジェンダー”れいれいさん”
自ら鹿児島まで歩き、様々な人々の暖かさに触れあい支えられながらの旅。
LGBTs啓蒙活動を続け、地方に住む当事者たちと出会ったことで見えてきた「LGBTsの現状」をお伝えする。 

 歩きながら考える自分の社会的役割 

旅が始まって31日目。ついに一か月が経ち、岡山から広島へと向かう。
この日は岡山担当の”てんちゃん”と一緒に岡山から尾道まで向かう。

”てんちゃん”はXジェンダーでパティシエをしている。
”てんちゃん”とは趣味が似ていてバイクやキャンピングなどのアウトドア系が好きらしい。

(”てんちゃん”) 

この日はせっかくなので観光もかねて倉敷の美観地区へと向かった。
美観地区では和の雰囲気が素敵なので一度見てみたいと思っていた。
カメラを片手に撮影をする”てんちゃん”についていきながら散策する。岡山の人といえど、美観地区のお店や範囲を正確に理解しているわけではないようで「こんなところにも道が!」という感じで新たな発見があったようだ。
景観はさすが美観というだけあって趣のある和が表現されていた。

(夏の美観地区) 
(冬の美観地区) 

ちょうど菜の花が咲く時期だったため笠岡ベイファームへと向かった。
撮影もここで行うことにし、兵庫からの荷物であるギャラクシーチョコを渡し、広島行きのきびだんごを受け取った。

(菜の花畑) 

あっという間に尾道に到着し一泊する。
尾道は四国を回るロードバイクの聖地のようで、自分が泊まった宿の前にもたくさんの自転車がとまっていた。

(尾道) 

旅の中で尾道から東広島までの区間は唯一誰にも会わなかった二日かもしれない。
平日なのもありタイミング悪かったのもあるだろう、久々にのどかな風景を楽しみながら自分と向き合い歩き続けていた。
時々農道脇で休憩していると通りすがったトラックの運ちゃんに声をかけられ、鼓舞していただくこともあった。
尾道の次は広島空港付近の宿で一泊した。
私の所感では、変に都市にある宿よりもIC付近にある宿のほうが豪華な印象がある。

尾道を出て広島空港を経由し東広島の西条、そして広島市内へ入る。(約80キロ)
広島の山越えを済ませた後にたどり着いた西条は酒蔵で有名で、ツイッターのフォロワーさんが出身だったり過去に住んでいたりしていたほど栄えていた。

(道中で一休み) 

西条を出発する日に福岡から”いちくん”が来てくれた。
”いちくん”はXジェンダーでパンセクシャルだ。福岡の友人をきっかけに知り合い、福岡れいパにも来たことがある。もともとお互い心象が悪かったが、自分が「友達と恋人の境目がないこと」を相談したことがきっかけで距離が近くなった。人との付き合い方が他人や世の中と大きく異なることを否定的に悩んでいたことを受け入れてくれて、そういう人もいていいと思うと背中を押してくれた”いちくん”は自分にとって性別も性的指向も恋愛観もすべて尊重してくれるベストフレンドでパートナーだ。

そんな”いちくん”も自身のアイデンティティに悩まされてきた過去がある。
とても仲の良い家族だが、それでも自分の本当のアイデンティティをカミングアウトすることでその関係が壊れることに恐怖心を抱いていた。

自分も最初に友人や家族にカミングアウトしたときは震えていたことを覚えている。最初こそ理解してもらえるかを意識していたが、次第にわかりあえないことを前提に知っといてくれればいいと考えるようになった。しかし世の中のほとんどの当事者はやはり今まで築いた関係を壊すリスクや疑念をいただかせる可能性をつくることに抵抗がある人が多い。また、社会的に不都合がなければ『埋没』と呼ばれる方も多くいる。
「存在は知っていたけど初めて出会った!」という方が多いのはおそらく埋没派の人が多く存在しており、意識的に触れ合う機会がないことも考えられる。
しかし、自分も周りの当事者からカミングアウトの相談を受けることがあるのだが決してカミングアウトすることが最善で埋没することが悪いことではない。その人の置ける状況によってその判断は今後の人生を大きく左右するし、するもしないのも個人の自由でいいはずだ。
その代わり自分のような人間が大勢の非当事者と出会い存在とあり方を証明できればいいだけのこと。
もしくは、性別に対する社会的役割やゲイやレズビアンなどの言葉へのイメージがあることのほうがよっぽど先に改善すべき問題だと思っている。

(”いちくん”) 

まもなく広島入りし、すぐに”とも”が会いに来てくれた。”とも”は広島出身でQ(クィアもしくはクェスチョニング)だ。Qは自分が定まっていない人やあえて定義していない人を広義にさす。

(”とも”) 

その後は広島担当でもある”いちる”が会いに来てくれた。”いちる”は東京のれいパにもきたことがあるほどフットワークが軽い。きびだんごを渡して、初天神社の縁結びのお守り(広島なのに)を受け取る。実は”いちる”がれいパに来た時はドッジボールをした回だったのであまり話したことがなく、正体不明だったがどうやら鹿児島出身のため今回の企画のゴール地点である鹿児島にも親近感を抱いてくれたようだ。

(”いちる”) 

一か月で東京から広島までたどり着いたわけだが、この距離なんと約827キロ。
疲労感はぼちぼち、まだ残り500キロもあると思うとゴールには程遠いが着実に近づいている。

(東京から広島まで約827キロ) 

広島を出発する日は福岡の”よう”がわざわざ広島まで迎えにきてくれた。
ここから一気に博多に出ることになるのだが、実は数日広島で過ごしリフレッシュするかと思っていた左足のかかとが兵庫から痛み続けており、テーピングを巻いていない日のほうがひどかったので病院で受診することにした。結果はかかとの剥離骨折で数ミリのひびが入っていて、流石に東京から歩いてきたことに対しては当然ドクターストップをくらった。
しかし、ここまで来たのに引き返すのも嫌なので”よう”に甘えて一度博多で考えることにした。
そして、ここからまたたくさんの人の応援と暖かさを感じる旅になっていく。
こうご期待。

(”よう”) 

PROFILE

れいれい

1995年4月12日生まれ。男でも女でもないXジェンダー。恋愛対象はパンセクシャル(恋愛対象に性別を拘らない。)。
香港人の母と日本人の父の間に生まれ、幼少期より海外で過ごし国際的な文化圏で育つ。
物心がついた時から性違和を感じるも答えが見つからず、20代に入ってどちらでもないという概念に行きつく。
現在ではジェンダーフリーデザイナーとして、アパレルブランド「RAY RAY」、ボーダーフリーイベント「れいパ」をオーガナイズしている。

Twitter@rayhung0412
RAY RAY ray-ray.online/

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