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人生と旅は選択の連続 東京→鹿児島 1,300km歩いて日本を繋ぐ 第11章

男でも女でもないXジェンダー”れいれいさん”
自ら鹿児島まで歩き、様々な人々の暖かさに触れあい支えられながらの旅。
LGBTs啓蒙活動を続け、地方に住む当事者たちと出会ったことで見えてきた「LGBTsの現状」をお伝えする。

 みんな笑顔 

 旅25日目。兵庫を発つ。

 前日は深夜まではっぴーのメンバーと語り、少々寝不足。 

 今日は加古川(約37キロ)まで向かうが明石付近まで”きょうちゃん”と”ぬまっち”が一緒に歩いてくれることに。 

 有難いことに快晴で、歩くにはもってこいの日だった。垂水を通り、兵庫の海沿いを進んでいく。途中明石海峡大橋ではテレビでしか見たことのない絶景が広がっていた。 

明石海峡大橋
(明石海峡大橋) 

 リュックを背負いたがる”きょうちゃん”と嫌がる”ぬまっち”。結局一緒に背負うことになり二人とも20キロの重さを体験してもらった。 

“きょうちゃん”と“ぬまっち”
(“きょうちゃん”と“ぬまっち”) 

あっという間に明石に到着、二人と明石焼きを食べお別れ。 

20キロは静かな街並みを歩き続け無事到着。 

翌日は体調があまりよくなく30キロ程行く予定だったが、16キロ先の姫路にしか歩けなかった。午前中は神戸であった”まなと”(れいパレード9章参照)が一緒に歩いてくれた。 

“まなと”
(“まなと”) 

翌日は諸々を取り返すために姫路から赤穂(約33キロ)まで向かう。 

最初は敬遠していた”きょうちゃん”にもすっかり気に入られ、この日もわざわざ長田から姫路まで会いに来てくれた。 

(“きょうちゃん”) 

前日のペースを短めにして休息をしっかりとったのもあり、この日はあっという間に赤穂にたどり着いた。赤穂では”なる”と”みお”が迎えてくれ、おうちにお邪魔した。”なる”とは大阪のれいパで面識があったが、”みお”は初対面。とても気さくで今ではすっかり”みお”とゲーム友達だ。 

”なる”と”みお”はパートナーでご両親も公認しており、自由な愛のカタチに理解がある。 

祝福されない同性カップルが多いことは想像にたやすいかもしれないが、実は祝福されないトランスのカップルも非常に多い。 

戸籍変更も済ませ制度上婚姻が問題なく行えたとしても元女性、元男性という理由だけでなく、生殖ができないという理由で反対する方が非常に多いのが現状だ。 

子供を持つ喜び、育てるということが人生で必ず行われなければいけない通過儀礼と捉える世代も当然いるが、この「しなければならない」という義務感が子育てを望むトランス当事者の首をより絞めることになっていく。戸籍変更を行うには性転換手術が必要である。性転換手術というのはただ体の形を変えたりホルモン投与によって変化させることだけでなく、生殖器官の排除も必須要件に含まれている。 

当然現代の技術では生殖器官があれど同じ形である限り生殖することはまだできないが、制度上求められている形と世論が考える「健全」「健康体」に対する認識がズレている。 

そもそも子を生むことも孫を抱く願望も親のエゴであり、未知数の未来よりも自身の子がまず幸せに現世を生きていることの方がよっぽど大事だと私は思うが・・・。 

“なる”と“みお”
(“なる”と“みお”) 

この日の深夜”あゆ”がわざわざ大阪から車で会いに来てくれた。忙しい予定のなか高速に乗ってまで会いに来てくれたそうだ。 

毎日いろんな人が時間や労力を使って会いに来てくれることが本当にありがたいことでうれしい。 

“あゆ”
(“あゆ”) 

いざ岡山へ 

赤穂から岡山に向かうには天狗山をはじめかなりの山を越えていかなければいけない。 

”みお”曰く、「ここまで歩いてきてあの山を歩かせるわけにはいかない。”なる”が車に乗せて連れて行かなきゃだめだよ!」と話していたようで、お言葉に甘えて岡山まで運んでもらった。道中ひたすら山を越えていたが歩いたらここを通っていたんだなと思うと恐ろしい。今更だが。 

岡山の道中
(岡山の道中) 

赤穂の人は兵庫とはいえ関西方面に出るよりも岡山のイオンのほうが近いため、よく遊びに来るらしい。岡山駅周辺は栄えてはいるものの閉店時間が恐ろしいほど早かった。 

岡山に来て初めて出汁の自販機を見た。ご親切に英語で飲料ではありません、出汁です。と書いてあるのもまたシュールで面白い。 

出汁の自販機
(出汁の自販機)

岡山で一夜明け”中尾”が島根から会いに来てくれた。”中尾”は結構フッ軽で東京のれいパも来てくれたことがあり面識がある。今は島根だがもとは種子島出身らしい。 

岡山で一夜明け”中尾”が島根から会いに来てくれた。”中尾”は結構フッ軽で東京のれいパも来てくれたことがあり面識がある。今は島根だがもとは種子島出身らしい。 

島というのもあって、やはり公にしている当事者は多くないが、唯一同性と付き合っていることをオープンにしている人がいたらしい。同級生の間では特に反応することもなくごく当たり前のように過ごしていたという。逆に言えば上の世代に共有することはハードルが高いと感じることもやはりあるようだ。

ほどなくして”ぴー”も合流して三人でお茶しながら雑談をした。 

”ぴー”は岡山が地元で自分も”中尾”も初対面。話によると岡山でもやはり当事者同士のローカルのコミュニティは少ないようだ。 

“ぴー”と“中尾”
(“ぴー”と“中尾”) 

 夜は”なお”と合流した。”なお”は岡山で調理師の勉強しているFTMだ。せっかくなので”なお”がバイトをしていた日本料理屋に連れて行ってもらった。店内では大将のほか、同じ専門学校の同期も数名働いていた。同期たちは”なお”がFTMであることを知っていてとても仲がよさそうだった。”なお”からあふれ出る仲間に対する信頼が見え、素敵だと思った。 

人で溢れている都市部と地方のコミュニティ形成の仕方で大きな違いだと思うのだが、都市部では基本的に自身と似た境遇や特徴を持つ人を見つけるのが容易なため、親しくなくとも輪が出来上がっていく。それに対し、地方では自身の周りにいる仲間に打ち明けるところから始まり、非当事者でも理解と尊重を得ることができる可能性がある。 

どちらも一長一短でありその長所と短所を比較する必要はないが、地方における展開のハードルが高いことと浸透に時間がかかる理由も納得がいく。 

信頼できる仲間を作ることも難しいが、地方関係なくもっと難しいのは非当事者と恋仲になることだと思う。これはトランスもそうだが、同性愛者が非当事者を好きになることも含まれる。一般的に同性愛者は同性愛者同士で付き合うものだと思っている方は多いのだが、実は全く意識をしたことがない、もしくはもともと異性愛者だったというパターンもかなりある。そういった相手を見つけ、偶然お互いに気持ちが触れ合う様な仲になるには当然マイノリティの中のマイノリティである。同じようにトランス当事者が世の中の異性愛者の中に紛れ込めたとしても、その相手には自身の体には都合があることを知ってもらわなければいけない。それを打ち明けることができるかどうかは人それぞれではあるが自身の命運をかける一大事であることは間違いない。 

“なお”
(“なお”) 

岡山での滞在はあっという間に終わった。中国地方のハブでもある岡山なだけあり、常に人といたので退屈することはなかった。 

翌日はいよいよ広島へ向かうことになるが、広島担当でもある”てんちゃん”に連れられ、岡山めぐり、そして境目である尾道までの旅となる。 

旅続く。 

PROFILE

れいれい

1995年4月12日生まれ。男でも女でもないXジェンダー。恋愛対象はパンセクシャル(恋愛対象に性別を拘らない。)。
香港人の母と日本人の父の間に生まれ、幼少期より海外で過ごし国際的な文化圏で育つ。
物心がついた時から性違和を感じるも答えが見つからず、20代に入ってどちらでもないという概念に行きつく。
現在ではジェンダーフリーデザイナーとして、アパレルブランド「RAY RAY」、ボーダーフリーイベント「れいパ」をオーガナイズしている。

Twitter@rayhung0412
RAY RAY ray-ray.online/

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