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それぞれの視点から、愛を紡ぐ“家族のかたち” 「サスケ&ベンソン」未来予想図(サスケ視点)
平日の仕事終わりに駅で待ち合わせをし、スーパーへ向かう。夕飯の食材を買いそろえると、家に帰り食卓を囲む。少しばかりお酒をたしなみ赤ら顔で、実家で起こった話に花を咲かす。夜はもう少しそっちにずれてよと言い合いながら、気づくと背中同士をくっつけて寝ている。そして、休日は数か月前から予定していた旅行へと出かけたりする。お互いの顔を見るとホッと笑みが浮かぶそんな感じ。
そんな二人の姿は、あなたにとってどう映るだろうか?結婚によって生まれる証明ではなく、将来を語りあった二人が紡いでいく時間は、もしかしたら「家族」と呼ぶのかもしれない。
今回は、共に歩んでいく過程で互いを「家族」として捉え始めた、サスケとベンソンカップルの、出会いと恋、そして互いの存在についてを、それぞれの視点からうかがった。
なんだかんだ小突き合いする姿が微笑ましい図体のデカい男二人の姿。そんな二人の出会い。そして友情から恋愛へ発展するまでの歩み。
最初にベンソンと会ったのは新宿二丁目のイベントで僕がゴーゴーボーイをしていた時です。
当時彼は下着のモデルをしていて、普通に「あ、モデルの人だ!」っていう感じで話したのを覚えています。ベンソンは酔っぱらっていて、でもすごくニコニコしていて。だからその時の印象は「愉快なおじさん」くらいでした(笑)。
それから、当時ベンソンは東京に住んでいなくて、SNSでたまたま都内に来るようなことを発信した時に、ご飯に誘ったんですよ。友達も呼んでたので、みんなで一緒にわいわいっていう感じの飲み会に。ビールを凄くおいしそうに飲んでいた彼に「ビールおじさん」っていうあだ名をつけてからかってました。
都内で遊ぶことが増えてからしばらくして、ベンソンがスポーツ系の会社を立ち上げることになったとかで、上京してきたんです。それで、立ち上げを手伝ってくれないかって声をかけてきました。友達として何か協力できることはしたかったし、僕が以前インストラクターをしていたという経験が役に立てるかなと思ったので快く引き受けたんです。立ち上げの手伝いは思ったより忙しく、打ち合わせや相談が頻発し、気がつけば週に4日以上は会うようになっていました。しばらくそんな期間が続き、無事に設立を終えると、彼とも会う頻度は減っていく…のかと思ったら、全然そんなことはなく、むしろ前よりももっと会うようになっていたんですよね。
今思えばですけど、会社の立ち上げを手伝っているあたりから、ベンソンのことは意識していたんだと思います。ただその頃は明確な好きっていう感情はなかった感じで。ただ、その後もお互い自然に誘い合っていて、ご飯を食べにいったり飲みにいったりしながら、徐々にデートっぽいことをするようにもなっていましたね。
曖昧にせず、付き合うと決める覚悟。そして、付き合っていく中で変化していく生活サイクル。
周囲からお互い好きなんでしょ?とか付き合っているんでしょ?という感じで茶化されたりする程度デートを重ねていたのですが、どちらもそれを口に出すことはしていませんでした。それでなんとなくの気持ちのままでいたある時、ベンソンが海外出張することがあったんです。大体3週間くらいだったかな。これまで、ほぼ毎日のように会っていた相手が、急にいなくなってしまったんですよね。そしたら、突然悲しいというか何ていうか、元気がなくなってしまって。ああ、彼がいないと僕は寂しいんだって明確に気がつかされたんですよ。
その後、クリスマスのイベントに二人で出演した時、ベンソンからクリスマスカードをもらったんですよね。内容はあまり覚えていないんですけど(笑)、それを読んでから彼が本気で僕のことを想っている気持ちが伝わり、きちんと向き合うことにしたんです。その日から、僕とベンソンは付き合うことになりました。
付き合いはじめてから、同棲を始めました。その前からも一緒に泊まることがよくあったのですぐに慣れはしたのですが、逆に同棲してから、お互いの生活リズムのズレを感じるようになっていったんです。
それまでは、この日は一緒にご飯を食べよう、とか曜日や日にちで会う日を決めてその時間を共有できていたのですが、同じ家に住むようになると、そこに重きを置かなくなり、お互い別々のリズムで行動していたんです。同じ屋根の下にいるだけで、一緒にいない感じ。でも、よくよく振り返ってみると家族というか親って、子供が成長し自立していく中で自分の生活ができていき、一緒に行動する時間が減っていく、それと似ているなあとも思いました。
僕はベンソンと一緒にいたいという気持ちが強かったので、だから同棲しても一つひとつの育みを怠らずに、お互い仕事の時間や就寝時間、食事の時間を合わせられる範囲で、工夫や努力をすることにしたんです。
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同棲をはじめ、互いに過ごす時間の一瞬一瞬を大切にするようになったサスケ。そんな彼にとってのベンソンは、どのような存在なのでしょうか。
僕にとって、ベンソンは「お互いに必要な存在」です。
ベンソンは、誰かが近くにいないと弱くなってしまう人なんです。だから彼にとっては僕がいることが必要だと思っています。
僕は真逆の性格で、普段の生活の中は一人で何でもしてしまうのですが、ベンソンがいるから自制していられるっていうことがたくさんあるんです。守らなきゃいけない、迷惑をかけちゃいけないっていう存在がいると、これまでのように好き勝手に動くのを思い止まらせてくれるんです。
前まではそうやって周りの大人に甘えてしまう、子供みたいな自分が嫌でした。でもベンソンといると、自然と自分がしっかりしなきゃと思えるんです。僕がひとりの人間として成長する為にも、ベンソンの存在は必要なんだと思います。
また、ゴーゴー活動を始めてすぐ、人生で初めて海外に行ったんです。急遽決まった仕事で、荷物も心の準備もままならないまま向かったんですよ。現地に着くと、言葉の壁やコミュニケーションの難しさを目の当たりし、自分の無力さをものすごく痛感したんです。それから、海外での出演がトラウマレベルで苦手になってしまっていたんです。
そんな僕を見て、ベンソンは流暢に言葉を交わし他の出演者に声をかけ、僕をフォローしてくれました。そういった引っ張る力もある彼のおかげで、僕は新しい視野で物事を見ることもでき、一緒に成長していける大切な存在なんだと思えました。今では僕一人でも頑張れますが、やっぱりベンソンは海外に行く時の必需品ナンバーワンですね(笑)。
大切なパートナーとの未来を描くということ。ふたりの関係に「結婚」を意識したことがあったか。
ベンソンと一緒に海外に行った時、僕は入国審査がスムーズだったのですが、彼は台湾国籍だったため審査にすごく時間がかかった時がありました。その様子を見ていて、何故だかすごく不安を感じたんですよ。無事、審査を終えて戻ってきたベンソンが申し訳なさそうに「戸籍上の夫婦だったらこんな心配もさせなくて済むのにね」って言ったんですよね。
今まで、誰かと結婚をしたいという願望は特になかったんですけど、その言葉を聞いてから正直、制度での婚姻を意識しだしました。
日常のほんの些細な出来事がきっかで、誰かを愛したり、お互いに必要な存在だと感じるようになります。僕の描く未来予想図は、海の見える温泉地でのふたりの新生活。そこで、僕たちの好きなロコモコが自慢のレストランを出したいなって。過去に力を合わせ会社の設立準備をした時のように、今度はお互いの好きなものを集めたお店を開きたいですね。お互いが、お互いを想い支えあえば、きっと、その夢が叶うんじゃないかなって。
婚姻制度があるに越したことはないけれど、それ以前に、僕はパートナーとの未来を一緒に描いた時、それが家族であって、ひとつの夫婦の形なんじゃないかなって思っています。
サスケ/SASUKE
ゲイ雑誌バディの2018年3月号の表紙モデルを務め、その後各地のゲイイベントでゴーゴーボーイとして活動をする傍ら、モデルとしても活躍の場を広げる。現在はゴーゴーボーイの活動は無期限休止中ながら、ゲイコミュニティにおいて新しい形で携われる形を模索中。