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ひとりと向き合うことから、LGBTsフレンドリー企業へ。

タクシー業界で一歩先をいくダイバーシティ推進企業「日の丸交通」!

月に1回、TOKYO MXで放送中の「日本の底力」。おぐねぇーさんをナビゲーターに、LGBTsへの理解がある一歩先をいく企業を紹介する第二弾は、日の丸交通です。前回のLUSH(http://jibun-rashiku.jp/article-283)に引き続き、自分らしく生きるプロジェクト取材班も番組制作現場に潜入!

激動の時代を迎えるタクシー業界の中でも、まっ先にダイバーシティ推進にとりくむ企業の内側を徹底レポートします。

よく晴れた冬の朝、訪問したのは、日の丸交通の世田谷営業所。すぐ横で新社屋の工事が進む中、事務所は営業に出かける前のドライバーたちでごった返していました。最近では女性ドライバーを見かけることも多くなりましたが、パッと見の印象ではまだまだ割合的に男性社会のようです。

そんな中、取材班一行を出迎えてくれたのは次長の三木孝志さん。ご挨拶もそこそこに、おぐねぇーさんが気になったのは、三木さんの胸元につけられたレインボーのバッジでした。「これって、僕たちLGBTsに関係あるものですか?」と伺うと、「そうなんです、LGBTsをはじめ女性や外国籍の方など、多様な人材が集まって一台の車が成り立つという我々の姿勢を象徴するアイテムをつくりました」と、いきなりさすがフレンドリー企業!なお話をいただと思ったら、ちょうどそこにいたドライバーさんを「ここにもいますよ」と、すかさずLGBTs当事者の方をご紹介くださいました。

一見、男性社会のように見えた会社の中で、LGBTsの当事者があたり前のように働いている。その中身がどうなっているのか、いろんなお話を聞いていきましょう!

LGBTs当事者は、タクシードライバーとして優秀!

日の丸交通で3年くらい前からはじまったというLGBTsとともに働くとりくみ。第一人者として扉を開いた長本さん(写真中)は、ドライバー歴も約3年で今や営業所のエースだそうです。他にも、数名のLGBTs当事者のドライバーに集まっていただき、おぐねぇーさんとざっくばらんに会社や仕事の状況についてお伺いしました。

長本さんの前職は、水商売。新宿二丁目のオカマバーで働いていましたが、数年前にお母様とのふたり暮らしをはじめたこともあり、将来的な不安ともともと運転が好きだったことから、タクシー業界に転職してきたそうです。他の方たちの前職も、コンビニや工場勤務などまったく違う業界から。そんな中、今のドライバーという仕事を長本さんはどう感じているのでしょうか。「わたしはもともと人が好きだから、感謝されるとうれしいですね。LGBTsであることをネタにして、自分からお客さんをいじりますし、そういうお客さんの方が『ありがとう』と言っていただけることが多いです」と、さすがのエースらしいお答えをいただきました。

トランスジェンダー(MtF)の黒岩さん(写真左)は、ドライバー歴2ヶ月の新人。それでも、「お年寄りの方とか、乗車に苦労されているお客さんに『お手伝いできることありますか?』と伺った時に感謝されるのがうれしいです」といった体験があり、おぐねぇーさんも「人に手を差し伸べることに躊躇しないのはLGBTsの得意なところですよね」と納得の様子でした。

他にも、「給料が安定しているし、福利厚生もしっかりしていて定年も決まっていないから長く働ける」など、タクシードライバーという仕事の実情を伺うにつれ、LGBTs当事者が抱える悩みを解決するポイントがいくつもあがってきました。

しかし、まだまだはじまったばかりの日の丸交通のLGBTsとともに働くとりくみ。圧倒的に男性の数が多い職場ならではの悩みもあるんだそうです。

日の丸交通への転職をきっかけに、男性から女性としての人生を歩みはじめたトランスジェンダーのドライバーAさんは「ホルモン注射をはじめて1年くらいで、体が女性らしくなってきました。今の更衣室は男性用と女性用しかないのですが、まだ体には男性らしい部分も残っているので、どちらの更衣室で着替えるのも微妙で、制服のまま営業所まで通勤しています」と今の課題を語ってくださいました。

さらにAさんは女性の通称名で乗務員登録しているそうで、「時々、会社の書類に本名を書かなければいけない時があって、『社員番号と名前が一致しません』と言われると、やっぱりすこし傷つきますね」とのお話をいただくなど、一朝一夕には解決しない課題があることも改めてわかりました。

3年前からLGBTsと向き合い始め、出てきた問題とひとつひとつ向きあいながら、フレンドリー企業として一歩一歩前へ進んでいる日の丸交通。当事者の方にお話を伺った後は、企業として最前線でとりくんできた三木さんに、日の丸交通のこれまでとこれからを語っていただきました。

社内の理解は、先入観の払拭が鍵になる。

3年前LGBTsへのとりくみをはじめた日の丸交通。そのきっかけは、なんだったのでしょうか。当時、三木さんは営業所の所長という立場だったそうです。「もともとはドライバーの超人材不足という背景がありました。そこから女性、外国籍の方などを積極的に採用するようになったのですが、LGBTsのとりくみをはじめたきっかけは、長本さんでした」。まだLGBTsとともに働く体制がなかった日の丸交通に、女性の姿で、男性としての履歴書を持って面接にきた長本さん。「どうしましょうか」と人事担当者から相談を受けた三木さんは、「どうにかしないといけない」と考え、長本さんを採用することになり、結果として会社がダイバーシティをさらに推進していくきっかけになったと言います。

「高齢者が多い職場ですから、最初は社内でも抵抗感は見られました。わたしが一人ひとりと話し合って理解を進めようとしましたが、何よりも長本さん自身の人柄と努力が説得材料になりました。やさしくて、おもしろくて、気遣いができる。そのキャラクターに触れることで、LGBTsに対する先入観も自然と消えていったんです」。

社内での理解を地道に進めていく一方で、LGBTsのドライバーに対するお客さんの反応はどうだったのでしょうか。

「もしもお客様からの評判が悪かったら、LGBTsとともに働く施策もやめなければいけないと思っていました。しかし、実際は逆で、ものすごく評判がいい。タクシードライバーは、いろんな人生を背負ったお客様を乗せて、時には身の上相談を受けることもあります。並々ならぬ苦労や悩みと向き合ってきたLGBTsの当事者は、人の痛みがわかるから接客業として理想的な資質を持っていますし、粘り強くて根性があるから、売上もいいんです。会社として、これからもっと多くの人材を採用して多様性を高め、LGBTsという言葉すら社内からなくなるくらいにしたいと思っています」。

40年という歴史を刻んできた世田谷営業所は、現在新社屋を建設中。その設計段階から、ダイバーシティを意識した会社としての進化がはじまっているそうです。

「LGBTs当事者に対して、今は着替える場所も時間限定での用意になってしまっています。特にトランスジェンダーのドライバーにはまだまだ迷惑をかけていますが、新社屋では専用のロッカーとシャワーができて気兼ねなく使ってもらえるようになります。究極的には、男性から女性に性転換したトランスジェンダー(MtF)のドライバーは女性のロッカーを使えることが理想だと思いますが、ストレートの女性ドライバーにもいろんな考えを持った人がいます。また、トランスジェンダー専用のロッカーができたらできたで、予期せぬ問題も出てくるはず。フレンドリー企業へ、まだまだ道半ばですが、一歩ずつ学びながら進んでいきたいと思います」。

40年の時を経て、新社屋とともにLGBTsフレンドリー企業として新たなスタートを切ろうとする日の丸交通世田谷営業所。企業として変わる、最初の風穴を空けたのは、女性の見た目で男性の履歴書を持って面接にきた長本さんでした。そこには、自分から世の中を変えてやろうとする強い決意があったそうです。「男性として振る舞わないと採用しないと言われていても、入社するつもりでした。LGBTsであることが受け入れられないのなら、中に入ってから、会社を変えていこうと思っていたからです」。

例えば、採用の段階でLGBTsへの理解が得られたとしても、すぐにすべての従業員が理解するのは難しい時、当事者自身が周りに認められるように努力することも求められます。日の丸交通で最初、LGBTsの採用に高齢層をはじめとする一部のドライバーが抵抗感を示したのも、まだ拭いきれていない先入観があったから。LGBTs当事者がセクシュアリティをオープンにして社会に出ていく時、どれだけ強い心を持たないといけないのでしょうか。世の中の理解がもっと進んでいけば、LGBTsというセクシュアリティをもっと気軽にオープンにしていけるはず。今回の企業訪問では、自分らしく生きるプロジェクトもテレビやWEB、SNSを通じて、さらに多くの人へ情報を届け、理解を進めていこうと決意を新たにさせていただきました。

まだまだ知られていないLGBTsへの理解にとりくむ日本の企業を毎月ご紹介する「日本の底力」、次回もぜひお楽しみに!

PROFILE

日の丸交通

人種や国籍、宗教、性別、LGBTの垣根を超えて、多様な人をタクシードライバーとして採用し、育てていく“DRIVERSITY採用”(DRIVER × DIVERSITY)を実施。企業としてダイバーシティ推進に本腰を入れてとりくんでいる。

https://hinomaru.tokyo/recruit/diversity/

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