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人生と旅は選択の連続 東京→鹿児島 1,300km歩いて日本を繋ぐ その④

男でも女でもないXジェンダー”れいれいさん”
自ら鹿児島まで歩き、様々な人々の暖かさに触れあい支えられながらの旅。
LGBTs啓蒙活動を続け、地方に住む当事者たちと出会ったことで見えてきた「LGBTsの現状」をお伝えする。


一人で生きていけても独りでは生きていけない。

旅が始まって7日。
豊橋で一夜明け、豊橋駅周辺は深夜の喧騒とは裏腹に家族連れで賑わっていた。
駅では“ぽんくん”(FTM)が見送りをしてくれた。
話を聞くと友人は何名かいるが名古屋やその周辺ではやはり当事者同士の横の繋がりは薄く、コミュニティはほとんどないという。

ぽんくんお見送りありがとう

今日は楽な日。

豊橋をあとにして岡崎へ向かう。
道中はとてものどかで、変わらない風景を楽しんだが、やはりトヨタの聖地なだけありトヨタ車がよく走っている。豊橋周辺は歩道の方が危険なので本当に気を付けるようにと色んな人に言われていて何を大げさなと思っていたが、僕は道中2~3回轢かれるかと思ったし、コンビニでアクセルとブレーキを間違えて危うく店舗に突っ込みそうな若者もいたので、豊橋周辺に行くことがある方はぜひ気を付けていただきたい。
岡崎までは右も左も山で道中休憩できるスポットが少なかったが、距離で見ると30km程度しかないためこの日は比較的早く目的地に到着することができた。

豊橋駅から岡崎駅まで
道中は左右どちらもこんな風景

たくさんの訪問者に囲まれて

到着してすぐ、“ずーにし”という子から連絡があり急遽会うことになった。
“ずーにし”はもともと都内で暮らしていたが、転勤で岡崎勤務に。
仕事がハードでうまくいってなかったらしく、岡崎には友人がいないためおちこんでいたようだ。
そんななか僕がたまたま通るということもあり声をかけてくれた。
僕らも人間だ。一人が好きな人も当然いるだろうが、完全に孤独で生きていける人はそういない。どれだけ孤独を好む人でも心のよりどころは何かしら必要で、当事者関係なく人は人との繋がりをもって生きていると僕は思っている。
歩いて成し遂げたいことはまさにこうやって人を繋いでいくことだからこそ、短時間ではあったが“ずーにし”が何度も会えてよかったと言ってくれたおかげでここまで来て出会えてよかったと思うと同時にこの先もまだまだたくさんの人に出会いたいという気持ちを強くしてくれた。

ずーにしとドライブ、出会えてよかった

ほどなくして“ふぇい”が会いに来てくれた。
“ふぇい”はXジェンダーのパンセクシャル(恋愛対象に性別問わない)で、同じくXジェンダーでパンセクシャルの恋人“ふぁい”が大阪にいる。このカップルは僕個人的にもお気に入りですごくオシャレで耽美な二人だ。SNSでは度々話すことはあったが、実際会うのは初めてで“ふぇい”は人見知りをしていた。他愛もない話から、ブランド立ち上げの話をした。
見た目は派手で奇抜かもしれないがものすごい常識人で、それゆえに世間の一般論と自分の在り方を気にしていると感じた。
僕も道中派手髪だったので痛感したのだが、ピアスやタトゥー、都会では日常的にみるファッションでも地方では異端とされ、非常に浮く。さすらいの旅人ならまだごまかせるかもしれないが、ローカルに住むとなると肩身が狭いことは容易に想像できる。
髪が何色だろうと、体に穴がいくつあいていようとその人のもっている能力は変わらない。
ファッションブランドを営む者としてセクシャルマイノリティの当事者であることだけでなく、服装や容姿へのバイアスも少しずつかえていきたいものだ。

左からふぁいとふぇい
静寂な田舎に派手髪二人

21時頃を回ったころ“新保さん”が仕事後に新幹線で会いに来てくれた。
“新保さん”はアライで『自分らしく生きるプロジェクト』のプロデューサーをしている。こういった縁があって、旅の動向を寄稿させていただく機会をもらった。
お鍋をつつきながらここまであった話、自分の話をした。“新保さん”は「知らないからこそ聞く」というスタンスを保ってくれるため非常に話やすい。対照的に「こういうイメージだよね」という話し方をする人はバイアスがとてもかかっていて話にくい。非当事者でよき理解者とはこういう人のことを言うのだろうなと思っている。

自分らしく生きるプロジェクトプロデューサー新保さん

いざ名古屋入り

一夜明け、愛知県は雨予報だった。
パラパラと雨が降ったり止んだりするなか、“せりなさん”が名古屋からわざわざ岡崎方面に来てくれて合流した。“せりなさん”は旅が始まる前の最終調整で「千葉から新宿まで歩く」生配信をしていた時に見てくれていた。今回は一緒に名古屋方面に歩くということだったが、まさかスラックスにシャツ、そして革靴で来るとは思っていなかった。“せりなさん”はパンセクシャルで手相の占い師をやっている。とても聡明で気さくな方で、道中名古屋に因んだ歴史や地名、雑学を共有してくれた。ちなみに僕は占いを信じていないと正直に伝えたのだが、「占いは迷いがある人を導くためのもので、れいれいみたいに自分が明確な人には必要がない。」という。
占えばその通りになるのではなく、占った結果を意識することで人は変わるという視点は確かに理にかなっている。人生の方向性に迷いがあるときはぜひ“せりなさん”に導かれてはいかがだろうか。

安城らへんで雨が大降りになった。せりなさんは僕のためにレンタカーを借りにわざわざ名古屋に一度戻り、僕はその間刈谷を目指して歩く。
土砂降りのなか、1時間近く歩いた。旅が始まって以来、初めての本降りだった。
無事合流してそのまま名古屋までのせてくれることになり、予定より一日早く名古屋入りすることができた。レンタカーの時間に少し余裕があったので、市内に入ってから名古屋の見どころをたくさん紹介していただいた。

どうやら名古屋市内の女子大小路には当事者がやっているお店がいくつかあるらしい。また毎年(本年はコロナのため中止)、NLGR+というセクシャルマイノリティのお祭りが栄の池田公園で開催される。本イベントは横に併設されている保健所でHIV、梅毒、B型肝炎、C型肝炎の4種が無料・匿名で検査を受けられるようになっており、地域ぐるみで健康と多様性を意識するイベントとなっている。
名古屋は福祉に手厚い政策を行っているらしく、多様性のなかで様々な方の健康を支える制度や体制を整えているようだ。

ところで“せりなさん”はパンセクシャルであるということはお別れする直前ぐらいに知ったのだが、それぐらい相手を尊重していればジェンダー(性別)やセクシャルオリエンテーション(性的指向)というのはコミュニケーションの図り方に関係がないものだと改めて確信した。
ジェンダーは見た目のパス度(目指している性に見えている度合いのこと)がかなり影響するので容姿やファッションで判断されがちだが、セクシャルオリエンテーションは見た目だけでは当事者同士でもわからない。
僕らは確かに社会の一般論とは違った性質を持っているかもしれないが、特異なわけではない。特別なわけでもない。どこにでもいて人間社会に溶け込んでいる。

名駅まえでせりなさん

名古屋では数日滞在する。すでに周辺の県からも会いにきてくれる人がいるので楽しみだ。

名古屋駅

・手相占い師 せりなさん
Twitter@serina_uranai

・NLGR+ (Nagoya Lesbian & Gay Revolution Plus)
Twitter@nlgrplus
http://www.nlgr.nagoya/

PROFILE

れいれい

1995年4月12日生まれ。男でも女でもないXジェンダー。恋愛対象はパンセクシャル(恋愛対象に性別を拘らない。)。
香港人の母と日本人の父の間に生まれ、幼少期より海外で過ごし国際的な文化圏で育つ。
物心がついた時から性違和を感じるも答えが見つからず、20代に入ってどちらでもないという概念に行きつく。
現在ではジェンダーフリーデザイナーとして、アパレルブランド「RAY RAY」、ボーダーフリーイベント「れいパ」をオーガナイズしている。

Twitter@rayhung0412
RAY RAY ray-ray.online/

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