LGBTs学生コラム僕の名前はユウくんです

　僕の名前はユウくんです。高校2年生です。初めに、僕のことについて話します。僕はトランス男性です。小学生まで、性別で何かと決めつけられる場面に遭遇することが少なく、考えてこなかった僕にとって、自分が男性なんだと気づくのはかなり遅かったと思います。女じゃないと気づいたのは胸が膨らんだり、生理が始まったりした中学生の頃でした。それでも周りの反応が気になり、怖くて、高校1年生まで周りの仲のいい友達以外には女じゃないと伝えられませんでした。

　僕の高校では男子は学ラン、女子はブレザーでスラックスかスカートを選択することが出来ました。僕は学ランを着ることができないのはわかっていたため、スラックスにしようと思いました。しかし、親に「スカートにしなさい」と言われて反抗できず、初めはスカートを履いていました。当時はスカートを履くことで女子と思われる可能性が高くなると考えていたためとても嫌でした。2年生からはスラックスを買ってもらいましたが、そもそも女子の制服しか選べないことが嫌でした。また、学校生活では男女分けが多く、女子に振り分けられるたびに気分が悪くなりました。我慢できなくなり、担任と保健室の先生に自分は女じゃないとカミングアウトをして、着替えとトイレだけは別にしていただきました。しかし、うちの学校には多目的トイレがないので、保健室横の女子トイレを使用しています。
　それでも男女分けされる場面が減ったわけではありません。嫌だと思ったら先生に言いたいのですが、あまり言えません。その理由は、僕に対して担任が
「先生は男性だから気持ちは分からない。」
保健室の先生には
「あなたは女性らしくしてるから勘違いされるのよ。」
と言われたことがあったからです。否定される、そう思うとただ声を掛けるだけでも怖くなります。その2人の言葉だけで自分を責めるようになりました。

　2年生の夏、同じLGBTの方との交流会へ参加し始めました。オンラインから始めて、対面での交流会にも参加しました。その時、初めて僕は独りじゃないんだ、僕だけがおかしいと思ってたわけじゃないんだと実感しました。同時に、自分の学校でも同じようにおかしいと感じる人がいるのかもしれないと考えました。

　まずは友達に聞くことから始めました。すると制服、呼称、授業の扱い等々…性別に違和感があってもなくても、おかしいと感じることはあるようでした。また、先生数名にも同じような質問をし、意見をいただきました。その時、先生方は男女分けが変だと思ってても動けないことがあるということを知りました。それならば、校長先生に言えば何かしら変わるのでは？と思い、当時受けていたカウンセラーの先生に相談しました。結局、直接会うのは難しそうだったため手紙を書くことになりました。学校への僕の気持ちと友達や先生に聞いたこと、男女分けへの違和感について、5枚に渡って書きました。その後、2週間ほどで手紙の返事をいただきました。
『LGBTについては研修を受けているし、課題意識は持っている。あなたが列挙してくれた課題と要望は出来るところから改善する。不便なところはカウンセラー始め、担任や保健室の先生に相談しながら過ごしてください。』
というような内容でした。また、来年度からトイレ改修工事を始め、各階に多目的トイレを設置する予定だとおっしゃっていました。後輩たちは教室から遠い保健室トイレを使用しなくてすむと思うだけで嬉しくなりました。また、僕の学校のトイレは区の高校のなかでもボロくて有名なので助かります(笑)

　否定されなかった。それだけで僕が動いたことは間違いじゃなかったんだなと思いました。また、手紙の返事を待っている期間に僕はクラスみんなにカミングアウトをしました。その後、クラスメイトにLGBTについて教えて欲しいと言われました。理解しようとしてくれる人がいる、それだけで心がとても暖かくなりました。まだまだ不便なことはありますが、少しずつ変わっていけたらなと思います。

　先生に否定されたとき、きっと理解されないだろうと諦めてしまったらどうなっていたでしょう。傷ついて、前へ進むのをやめてしまったら、つらくて苦しい思い出のままだったと思います。だけど一人で進むには、壁が大きすぎて無理でした。僕が進めたのは共に大きな壁に並んでくれた人がいたからです。それは、賛同してくれた友達や先生、SNSで繋がった直接手伝えなくても応援してくれる人たちでした。いつしか壁は大きな扉となり、非力な僕のためにみんなが一緒に押してくれました。だから前へ進むことができました。
僕は”ユウくん”というありふれた名前で、どこにでもいるような人間です。このコラムを誰かが読んで、前へ進む勇気となれたなら幸いです。読んでくれてありがとう！

あなたは、ひとりじゃないよ。