COLUMN
アウティングとは?意味やカミングアウトとの違いについて。性に対する正しい知識を持とう。
セクシュアルマイノリティについて理解が進みだしている今、セクシュアルマイノリティへの取り組みに力を入れる企業なども増えています。
しかし、性の多様性が認められ始めたとはいえ、「アウティング」に悩まされている方もいるかもしれません。ここでは、アウティングについて、カミングアウトとの違いについて解説していきます。
セクシュアルマイノリティについて
冒頭でお伝えしたように、近年セクシュアルマイノリティへの理解が進みだしています。セクシュアルマイノリティの総称のひとつである「LGBT」。
この言葉の認知度も高まってきていますし、自らのセクシュアリティをいかしてテレビで活躍されている方も増えてきています。
しかし、だからといって全ての人たちがセクシュアルマイノリティを理解しているわけではありません。
家族、周囲の人たちに自らのセクシュアリティを伝えたらどのように思われるのか…。
自らのセクシュアリティを告げることを躊躇したり、あえてしない方など、さまざまな方がいます。
今、セクシュアリティへの理解は進んでいるものの、全ての当事者が気軽に周囲にカミングアウトできる社会ではないということを理解しておきましょう。
カミングアウトやアウティング
セクシュアルマイノリティを知る上で、カミングアウトやアウティングという言葉を知る必要があります。
後述で詳しく解説しますが、自らのセクシュアリティを告げるカミングアウトについては耳にしたことがある方もいるでしょう。一方で、アウティングという言葉は耳慣れない…という方が多いかもしれません。
似たような言葉ではあるのですが、その内容は全く違います。この二つの言葉は分けて考えべきものです。
アウティングについて
まず、今回の主題であるアウティングについて解説していきましょう。
アウティングとは?
アウティングとは、「セクシュアルマイノリティを第三者が勝手に他人に言いふらす」という意味で使われている言葉です。
“言いふらす”という言葉からよいイメージを連想しにくいですが、実際にも“セクシュアルマイノリティの方を傷つける行為”という認識で使われている部分があります。注意が必要な行為なのです。
アウティングについて具体的に知る
アウティングは、人を傷つける可能性がある。
その理由を例を挙げてみていきましょう。例えば、Aさんという男性が自らを「ゲイ」とBさんに伝えたとしましょう。
AさんはBさんを心底信頼しており、“この人だったら受け止めてくれるだろう”という意味で勇気を振り絞って伝えています。
Bさんもそれを受け止め、その場はそれで終わったとします。しかしBさんが、CさんやDさんなどに「Aさんはゲイだよ」とAさんの許可なく勝手に伝えてしまいます。
これが、アウティングです。後日Aさんは話していない人たちから「Aさんはゲイなんでしょ?」とか影で「Aさんはゲイだ」と言われていたことを知ったら、どのような気持ちになるでしょうか…。
その結果、Aさんは深く傷ついてしまうかもしれません
これが、アウティングなのです。
カミングアウトについて
「他人に伝える」という意味では、カミングアウトも一緒ではないか。そう考えてる方もいるかもしれません。しかし、前述したようにその内容はアウティングとは全く別です。ここからはカミングアウトについて学んでいきましょう。
カミングアウトとは?
カミングアウトは、「押し入れの中から出す」というようなニュアンスで日本語で翻訳されることがあります。
押し入れの中にしまっていたような感情を伝える…という、重要な告白で使われることが多い傾向にあると考えられるでしょう。
セクシュアルマイノリティにおけるカミングアウトは、「第三者に自らの意思でセクシュアルマイノリティであることを伝える」という行為となります。当事者の方が自分の意思で告げる。これが、アウティングと大きな違いです。
アウティングとの違いは?
カミングアウトは、前述したように自らの意思で第三者にセクシュアルマイノリティであること告げる行為です。アウティングは、当事者の同意無しで他人が他人にその方のセクシュアルマイノリティを告げる行為。
明らかに違うことがわかります。
また、ここで大切なことは「当事者が自ら選んだ人か否か」という部分です。
注意すべきポイント
例えばカミングアウトの場合、当事者の方が選んだ人に自らの情報を伝えます。
つまり、「この人であれば伝えても大丈夫」と自分の中で折り合いをつけてカミングアウトしている可能性が考えられます。
当然、「言いたくない・知られたくない」という人に向けて当事者の方がカミングアウトすることは考えにくいでしょう。
一方のアウティングの場合、当事者が知られる相手を選択することができません。第三者に言いふらされるという裏切りにおけるショックだけでなく、知られたくなかった方たちにまで広まってしまうショックをも受けることになるのです。
その人への信頼、周囲から目。当事者の方を深く傷つけてしまう行為がアウティングであることを忘れてはなりません。
一橋大学アウティング事件について
アウティングについて、当事者を傷つける行為とわかっていても思わずアウティングしてしまう…こともあるかもしれません。
その要因のひとつに、セクシュアルマイノリティの方がどういった思いでカミングアウトをしているのか想像力が足りないということが関係しているかもしれません。
以前、アウティングという言葉を社会に広く知らせるような悲しい事件が起こっています。
一橋大学アウティング事件とは?
一橋大学アウティング事件とは、2015年に一橋大学の法科大学院で起こった事件です。ゲイの学生の方が同級生のBさんに、自らがゲイだとカミングアウトします。
しかし、この同級生のBさんはAさんがゲイであることをLINEグループ上でアウティングしてしまったのです。Aさんはその行為によって強い精神的苦痛を受け、投身自殺をしてしまった…という痛ましい結末となりました。
また、Aさんはこのアウティングをハラスメントと捉え、大学側のハラスメント相談室に相談。
しかし、相談員側がアウティングがハラスメントに当たることを理解しておらず、むしろAさんに「自らがセクシュアルマイノリティであることを受け止めていないので、アウティングで傷つくのか?」というような、Aさん側に非があるような発言をしていたこともわかっています。
これをきっかけに、東京都の国立市ではアウティングが禁止する条例「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が施行されるなど、大きな社会問題として捉えられたのです。
アウティングを無くすために
アウティングが、どれだけ当事者の方たちを苦しめているのか理解いただけと思います。
今後、アウティングを無くすためには何が必要なのでしょうか。
想像力と知識
本人から第三者に伝えた場合はカミングアウトとなりますが、当事者のセクシュアリティを知る第三者が「次の飲み会で思い切って言ってしまえ」と煽り立てることはアウティングと何らか変わりません。
当然、テレビのような軽いノリで当事者の人にカミングアウトを強要するのもアウティングと捉えていいでしょう。
セクシュアルマイノリティの方たち全てが自らのセクシュアリティに悩んでいるわけではありませんが、誰もが受け止められているわけではありません。(もちろん、自らのセクシュアリティに自信を持っている方だからといって、アウティングしていいわけではありません)
もし、アウティングしたら相手がどれだけ深く傷つくのか。
こういった想像力を持つためにも、セクシュアリティについて深く理解する努力を多くの人がする必要があるのではないでしょうか。
個人を尊重する
アウティングについてお伝えしてきました。セクシュアリティは多様であり、それぞれを個人が尊重する必要があります。
そのためにもセクシュアリティをしっかりと理解し、勉強し続ける努力を続けるべきでしょう。これからも個人のあり方を尊重することを忘れないでください。
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